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それがいつかは誰もわからない:ジム・チャノス
2020年10月23日

キニコス・アソシエイツのジム・チャノス氏が、中央銀行の生み出すバブルのプロセスを説明し、1990年代終わりから2000年代初めの昔話をしている。


「みんなおそらくFRB・ECB・日銀は資産市場を救済しないと考えていたかもしれない。
それは間違いだ。
兆しはあったし、それは何年も前からあった。」

チャノス氏がReal Vision Financeのインタビューで、コロナ・ショックにともなう各国中央銀行による資産市場救済について驚きはなかったと答えた。
長くショート・セラーをやってきた同氏だけに、人為的に下げを抑止されることによる被害は大きいはず。
しかし、そこは大ベテラン。
相場が不利な方向に動いても何年でも待ち続ける筋金入りのショート・セラーは海千山千だ。

チャノス氏は1990年代終盤の昔話を語っている。

「1998年FRBは引き締め的政策を採っていた。
経済が好調でインフレが上昇し始めていたからだ。
もちろん、株式市場、特にNetscapeの1995年のIPO後の米市場では投機が増えていた。
1998年にはみんな目いっぱいの投機モードだった。
それが、1998年のロシア債務危機、さらにLTCM(破綻)によってすべてストップした。
市場が20%下落するとFRBは一転、緩和を始めた。
それが1999-2000年に入ると再度逆転したが、市場のシグナルは『FRBがついている』だった。
そして、目撃したような最後のひと上げが生み出された。」

2000年前後の実効FF金利
2000年前後の実効FF金利

チャノス氏は、現在再び市場が「最後のひと上げ」を演じていると考えている。
しかし、今回の起点はコロナウィルスのパンデミックではないという。
今回の起点は2018年のクリスマス・イブだったという。

「FRBが数年かけ引き締めを行い、市場に成長懸念があり、2018年初めのかなり投機的な相場の後に市場が躓き、20%下げた。
FRBは完全にパニックし、あるいは1998年のコースに転換し、かなり積極的な政策を公表し、それが2019-20年の相場を生んだ。」

現在の上げは2018年の暮れからの継続的な動きだとの見方だ。

2018年前後の実効FF金利
2018年前後の実効FF金利

2018年は「最後のひと上げ」が囁かれた時期だった。
1月にレイ・ダリオ氏やジェレミー・グランサム氏が市場のメルトアップの可能性に言及したが、その後、市場は逆に調整した。
米国でインフレ懸念が高まり、それがFRBの金融引き締めを連想させたことが大きかった。
しかし、それでも市場は持ち直した。
FRBは強気だった。
バランスシート正常化は「自動操縦」、FF金利引き上げも2018年12月まで継続した。
しかし、2018年10月初めから始まった長期金利の上昇とともに株式市場は調整に入り、12月末ついにFRBは白旗を揚げる。
以降は意外性だらけの金融緩和を続けることとなった。

チャノス氏は、FRBの政策の効果について懐疑的だ。
インフレ醸成にはたいして効かず、ただ資産インフレだけを醸成することになるという。
キニコスは個別銘柄をショートし、インデックス等をロングし、ネットでロングしているという。
ショート・セラーでありながら、FRBが引き起こす資産インフレは「心地よい」のだという。
うすい利を取りつつ、本格的な収穫期を気長に待つといった風情なのだろう。

2000年の崩壊後、2002年から、この政策が効かなかったことを指摘したい。
FRBが恐ろしく緩和し、投機バブルが破裂するにつれ、FF金利は2002年にかけ6%から1%に引き下げられたが、S&P 500は40%、NASDAQは80%下落した。・・・
これは効かなくなるまで効く。
それがいつかは誰もわからない。

チャノス氏は、こうした現象が1980年から続く世界経済の金融化の一端だと話す。
金融や市場が世界経済に占めるプレゼンスが大きくなってきた。
結果《しっぽが犬を振り回す》状況が定着しているのだという。
チャノス氏は各国中央銀行に対し痛烈な皮肉を投げかける。

とても明らかなことは、各国中央銀行が失業とインフレとともに金融市場混乱をデファクトの使命としているということだ。


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