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しばらく見通しは明るい:ジェレミー・シーゲル

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授は、強気スタンスを継続しつつも、今後FRBがよりタカ派的になると見て、先行きの混乱を予想している。


今はまだバイアスは上方にある。
この先の私の心配事は、インフレが10、11、12月と悪化するかもしれないことだ。

シーゲル教授がBloombergで、いつものように強気の見通しを述べた。
ただし、最近では必ず不安材料の言及にも相応の時間を割くようになっている。
不安材料とはインフレ昂進による金融政策正常化の加速だ。
教授は、以前からの主張のように、住宅価格上昇がCPIにまだ十分に反映されていないとして、今後のインフレ・データの悪化を心配する。
現状のデータがインフレを過小に示しており、それが人々に「誤った自信」を与えたという。

パウエル議長はテーパリング開始の確度が高いということを通告しただけでなく、テーパリングを加速させることを強く示唆した。・・・
インフレのデータが強くでれば、私はそうなると予想しているが、市場はこの先年末に向けて(テーパリング)加速に準備ができていない。
したがって、しばらく見通しは明るいが、この先問題も起こるだろう。

シーゲル教授は今週のFOMC前からFRBがややタカ派的に振れると予想していた。
特に利上げについて2022年に開始されるとし、場合によってはテーパリングと同時進行となりうると言っていた。
デルタ変異種、成長鈍化、中国 恒大の問題等がある中で、タカ派的な印象が強かったが、結果はかなり的中したといえるだろう。
テーパリングと利上げの同時進行こそ否定されたが、利上げ時期については前回より早まり2022年を予想するメンバーも増えている。

シーゲル教授はFRBの経済予想に首をひねる。

2021年9月FOMC時のFRBインフレ予想
2021年9月FOMC時のFRBインフレ予想

FRBは依然としてインフレが一過性と見ており、2022年には2%物価目標を少し上回る程度のインフレに戻り、長期的には2%を予想している。
この予想が実現するなら、FRBがインフレを理由として金融緩和に強くブレーキを踏むシナリオは成り立ちにくい。
(ただし、FOMCメンバー自身が予想する正常化程度のブレーキは踏まれる。)

シーゲル教授は、実際のインフレがFRB予想を上回り、結果、金融政策正常化の背中を押すことになると予想する。
そして従前どおり、現金・フィクストインカムはインフレ期に投資先にならないと説き、投資家が株式、不動産、実物資産等への投資意欲を増していると指摘した。

シーゲル教授は、米10年債利回りが以前の市場予想よりはるかに低いままである点についてもコメントしている。
ヘッジ手段としての長期債の需要が根強いという。

これは保険のようなもので、儲かりはしないが短期的にはいくらかクッションの役割をする。
これが大きな需要を生み、この需要が無くなることはないだろう。
私が若き教授だった時代に比べ、はるかに低い利回りを維持することになろう。

現在10年債利回りはもちろん、30年債利回りで見ても、2%を割り込む低水準にある。
これは、長く長く低金利が続くと市場が予想していることを意味する。
(仮にヘッジ需要があろうと、買われすぎれば、予想との間である程度の裁定が働く。)

米10年債(青)、30年債(赤)利回り
米10年債(青)、30年債(赤)利回り

さらに目を引くのが物価連動債利回り(実質金利の実測値の1つ)だ。
これが30年債でも水面下にある。
仮に市場が予想するインフレ(期待インフレ率)が的中するなら、30年もの米国債に投資してもインフレにさえ勝てないことを意味する。
(10年ならなおさら。)
これこそ、シーゲル教授が現金・フィクストインカムにダメ出しする理由である。

米10年(青)、30年(赤)TIPS利回り
米10年(青)、30年(赤)TIPS利回り


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