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これは運命だ:ブリッジウォーター
2021年10月12日

ブリッジウォーター・アソシエイツのグレッグ・ジェンセン氏は、米経済政策の変遷から予想される経済・市場の運命について語っている。
11日の記事と同内容だが、やや詳述されている。


現在の状況は、富の配分が極度に悪い形で行われ、金利はすでにゼロまで押し下げられ、刺激できるものしか刺激できない。
この40年のサイクルの終わりとして、財政政策への移行は当然の帰結だったんだ。

ジェンセン氏があるポッドキャストで、超長期サイクルの運命論とも言うべき見方を示した。
同社の総帥レイ・ダリオ氏と同じ意見だが、ジェンセン氏の話の方が長い時間を与えられ、したがってわかりやすく(正しいかどうかは別として)説得力があるように聞こえる。

この極端なサイクルは基本的に反労働者、親企業、親資産、低金利、親債務であり、これらすべてがクライマックスに達した。
今せざるをえないのはそれを維持することだ。
貨幣を増発し、債務を取り除き、これまでのゲームで敗者となってきた人々に目を向けることだ。
彼らが社会の中でどう恩恵を得るようにするか、あるいは、社会を失うリスクを取るか。

1970年代から1980年代初めまで、米経済は高インフレに苦しみぬいた。
1960年代までに始まったインフレの兆候・要因に対し、政策決定者は真剣に対応せず、2度の石油ショックも重なり、インフレ昂進を招いた。
いったん制御不能になったインフレを抑え込むには荒療治が必要で、それがボルカー・ショックだった。
ボルカー・ショック後、技術革新や自由貿易など構造要因も重なり、インフレも金利も長期低下サイクルを辿った。
このサイクルは労働者に厳しく、企業に優しく、資産価格は上昇した。

ジェンセン氏は、超低金利なくして正当化しがたい資産価格を問題視する。
超低金利を前提としない限り、キャッシュフローとの整合が取れているとはいえない現状を危ぶむ。

「資産価格を押し上げた中での選択肢を考えると、どうやって資産価格をキャッシュフローと整合性のあるものにするか。」

投資家は投資に対してリターンを求める。
決して強欲ではなく相応のリターンを要求する場合でも、その取り分が大きすぎる場合が出てくる。
仮にそうなれば、労働者への配分が削られてしまいかねない。

富に将来利益が多く配分された年という意味での歴史上の4つピークは1999-2000年、1929年、1965年、1905年だ。
これを整合するには2つの方法しかなく、基本的に大きな富の不公平の問題を抱えている。

ジェンセン氏は、不均衡の解消には2つの現象しかないという。

  • クラッシュ(デフレ的解決): 1929年、1999-2000年
  • 所得上昇(インフレ的解決): 1965年、1905年

ジェンセン氏の予想は後者だ。
名目GDPが拡大し、政府による再配分もあり所得が上昇し、所得が資産価格に追いついていくという。
同氏はそこで起こったことをもう少し詳しく述べている。

資産の実質利回りはマイナスになったが、名目では必ずしも下がらなかった。
賃金と名目GDPは高成長し、その結果、キャッシュフローが資産価格と整合がとれるようになった。

ジェンセン氏はなぜこちらのシナリオを予想するのか。
もちろん、前者が悲惨すぎるということもあろう。
しかし、私たちの記憶にある過去では、そちらが起こってきた。
実際、ジェンセン氏も前者を引き起こした一因については一貫した要因を認めている。
それは政策決定者の明らかな「バイアス」だ。

停滞があるごとにどんどん財政・金融政策を強化していく。
回復ごとに引き締めは緩慢になっている。・・・
過去3回のサイクルで、どんどん金融環境は緩和的になり、財政赤字は拡大している。
私はこれを運命だと思っている。

ジェンセン氏によれば、デフレはもはや問題ではないという。
協調的な財政・金融政策を止めるタガははずれた。
デフレがあれば「貨幣を増発し支出を増やせばいい」のだ。
懸念すべきはインフレと通貨下落だという。

「リスクは、FRBが望まない時に引き締めざるをえなくなることであり、経済が悪化し、貨幣が増発されることではない。
後者の場合、資産保有者の側からすれば、お金が資産等に流入するためだ。」

皮肉なことに、まだ多くの人が恐れるデフレ・シナリオでは、政策決定者のバイアスにより、投資家に有利に働くと予想されるという。

ジェンセン氏は投資について2つの点に注意すべきという。
1つ目はインフレであり、資産の実質利回りが低迷すると予想される点だ。

「どんなキャッシュフローもアウトライトでは魅力的ではなく、金利との比較においてのみ魅力的になる。
すべての資産価格は、金利が現水準にある場合に限り合理的だ。」

資産価格は金利との比較においてのみ合理的・魅力的になりうる。
2つのものの比較によって魅力的になるなら、相対的に有望な方をロング、不利な方をショートすればよい。

政府が用意してくれているのは1%の債券利回りとそれよりはるかに高い名目GDPだ。
経済で生じるキャッシュフローが債券のそれより良くなる確率はとても高い。
名目GDPと連動するようなキャッシュフローを生む確率の高い株式を抽出できれば、良いスプレッドが取れる。

もう1つ注意すべきなのがドル(あるいはユーロ、円)の減価だ。

自国通貨建てで政府が資金調達できる国では、国債のリスク、つまり名目金利については懸念事項ではない。
その気になれば、中央銀行が国債を買い入れてコントロールが可能だからだ。
しかし、それをやり続ければ実質金利は低下し、通貨が売られる。
国債の減価が、自国通貨建て債券価格ではなく、通貨の価値の低下によって実現することになる。

この問題についてジェンセン氏は「良い答はない」という。
外貨、金ほかコモディティ、暗号資産などを挙げ、バスケットで持つことを検討しろといい、過去の似た時期を参考にストレス・テストを行うことを奨めている。

しかし、このアドバイスを実践するのは相当に洗練された投資家でないと難しいだろう。
まず、ヘッジ手段をバスケットで持てというところから、難しさが滲んでいる。
おそらく機関投資家でも、並みのところでは説得力のある答を得るのが難しいテーマだ。

ジェンセン氏は、明らかに目に見えているリスクの所在を指摘し、警告している。

みんな極端に米金融資産に投資しており、危険だ。
米債務商品は特に危険であり、FRBが与えてくれる流動性から直接恩恵を受ける米国株は危険だ。


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