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これは戦争、エイリアンの侵略だ:ケネス・ロゴフ
2020年3月23日

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、コロナ・ショックに対して正しい優先順位で出し惜しみのない財政政策を講じるべきと主張している。


間違えてはいけない。
これは戦争、エイリアン侵略のようなものだ。

ロゴフ教授が米公共PBSで、コロナ・ショックへの対応についての優先順位を述べた。
今ではコンセンサスになりつつある、極めてオーソドックスな優先順位だ。

「まず、本当に重要なのは医療セクターだ。・・・
次に、直接的に影響を受けている人たちとセクターを助けないといけない。
その次に、政府が言っているような個人に小切手を送るような救済だ。
これは、経済の健全な部分を守るためのものだ。」

問題の本質は伝染病であり、それに立ち向かう医療セクターを手厚く支えることが最高の優先順位に置かれている。
次に、困っている人たちの救済で、これも緊急性を要する支援だ。

現在は、潜在的な需要はあってもそれが現実のものとはならない状況にある。
だから、経済全体の需要を喚起するような刺激策はまだ効きにくい。
需要が現実化しうる状況になったところで、総需要を喚起するような施策が打たれるのだろう。

ロゴフ教授と言えば、著書『国家は破綻する』で財政悪化のリスクを唱えたことで有名。
しかし、今回の危機において財政問題を課題に挙げることはなかった。
今回の危機脱出については財政問題を心配していないと言い切っている。

米政府にデフォルトの懸念が起こったことはない。
懸念があったのは、必要な時に大量の資金を調達できなくなることだ。
『雨の時のための貯蓄』の趣旨はこういうことだ。
雨が降り出したなら、水門を開くべきなんだ。

建設的な財政慎重派としての信念が見て取れる。
危機や不況の中で財政出動を行うのは当たり前。
問題となりうるのは好況下での財政拡大など、不必要・不効率な財政支出であるはずだ。

ロゴフ教授は見通しを尋ねられると、予見できないと話すものの、短期的に成長が悪化し「失業率が2008年より悪化する可能性が高い」と話した。
一方、仮にウィルスを克服し感染状態が安定に向かえば、比較的早く危機を脱すると楽観しているとした。
ただし、回復のペースは国によってまちまちになるという。

ロゴフ教授は、財政出動を出し惜しみすべきでないという。
たとえ財政出動が(トランプ政権の2兆ドルでなく)5兆ドルになっても問題ではないと言い切る。
世界的なチェスの名手には、手順・優先順位がはっきりと見えているようだ。

現在は(財政に)限度なんてない。
戦争なんだ、勝たなければいけない。・・・
終わった後にインフレが来るにしても、戦争に勝つのに必要なら、何だというんだ。

最近、コロナ対策のために戦時体制を主張する人が増え、実際に非常事態制限など、戒厳令を連想させる政令も増えている。
財政についても、非常時の対応が当たり前とのコンセンサスが出来上がっている。
罪もなく過酷な状況に置かれている人が増えている時、支援・救済を惜しむべきでないのは明らかだ。
その意味で、今は財政悪化を心配すべき時ではない。
しかし、その一方で、正しい政策にもコストは存在する。
財政悪化への心配から出し惜しみすべきでないのが正しいように、いつかそのつけを払うことになるのもまた正しい理解だ。

ロゴフ教授が戦争に勝つこととインフレを防ぐことを天秤にかけたのは正しい。
また、ロゴフ教授がコロナ・ショックをエイリアン侵略に喩えたのは秀逸だ。
異なる(広義の)種の増殖によって、人類が大きな危機に瀕している。
しかし、相違点も存在する。

(人類の大戦や)エイリアン侵略の映画では、その終結時までに人的資本・社会資本が甚大な破壊を受けることがほとんどだ。
それに比べると、新型コロナウィルスは被害の規模としてはそう大きくない。
(もちろんそれでも甚大だ。)
人的被害は世界大戦や巨大円盤による爆撃に比べればやはり少ないし、生産拠点(少なくとも固定資産に限れば)も破壊されているわけではない。
だから、需要も供給も比較的戻りやすいと考える人が多いし、危機対応で実施された政策もあって経済過熱・インフレが心配されるわけだ。
これらは、危機後のプラスを見る人たちである。
逆に、循環的な景気後退が別に来た場合、政策の枯渇を心配する声も多い。


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