海外経済 投資 政治

これはバブルで大惨事が待っている:ピーター・シフ
2021年4月15日

ユーロ・パシフィック・キャピタルのピーター・シフ氏が、現在進行中の「経済回復」を貨幣膨張が仮装したバブルであるとし、大惨事につながると警告した。


(FRBの政策は)嘲笑を禁じ得ない。
まず、米国は経済回復していない。
今起こってるのはインフレで、インフレが経済回復を装っている。
しかし、経済そのものはひどい状態で弱く、回復をしていない。

シフ氏がロシア国営RTで、米経済は回復していないと主張した。
一見奇妙な主張だが、同氏の従前の主張を知っている人なら、巧妙な言い回しに感心することだろう。
この主張を理解するには、英語だけでなく《シフ語》の理解が必要だ。

米国がやっているのは、FRBが増発したお金を使っていること。
しかし、この貨幣増発はインフレだ。
それが経済成長を見せかけている。

インフレにはいくつか定義があり、多くの計測方法が存在する。
シフ語におけるインフレとは、英語の言葉に忠実なものなのだ。
つまり、(物価上昇でなく)貨幣膨張をインフレと呼んでいる。
「インフレが経済回復を装っている」とは、貨幣膨張が経済回復を装っているというという主張なのだ。
政府・中央銀行が債務や貨幣を増やし、それで需要を作ったとしても、それを経済成長と呼ぶべきでないとの含意である。
(実はこうした主張はGDPの父サイモン・クズネッツが望んでいたものだ。)

では、私たちが今「経済回復」として見せられているものはいったい何なのか。
シフ氏はFRBの足元を見て将来を予想する。

「これはバブルで、大惨事が待っている。
物価は最終的に空高く急騰する。
パウエル議長の言うことなんて関係ない。
対処する手段を持っているのかもしれないが、使わないだろう。
使ってしまうと、これまで一生懸命作ってきた砂上の楼閣を壊すことになるからだ。」

シフ氏のいう使われない「手段」とは何なのか。
総じてこれまでの政策を逆戻しすることだという。
結果、バブルを弾けさせることになるが、経済を害することはないという。
シフ語においては「経済」(GDP)にバブル部分はそもそも含んでいないからだ。
シフ氏は、手段の中身を概説する。

「マネーサプライを収縮させ、金利上昇を許容しないといけない。
これは至る所で発生しているバブルを弾けさせ、米政府に歳出削減を迫るだろう。
将来の刺激策をキャンセルするだけでなく、過去の刺激策の分を取り戻さないといけない。
政府支出の大幅削減、または増税が必要であり、増税は金持ちだけでなく平均的アメリカ人にも行わないといけない。」

ある意味で一種のバランス感覚のある提案であり、また同時に無理筋な提案だ。
ただし、シフ氏の発言としてはショッキングな点もある。
同氏はリバタリアン的な考えを持ち、小さな政府を好み、税金を嫌う。
これはDNAに刻まれた思想であり、この実践のためにプエルトリコに事業ごと移転したほどだ。
そのシフ氏が、バラマキを取り戻すためとはいえ、増税を提案している。
一連の財政刺激策がいかに米社会において新奇なものであったかがうかがえる。

シフ氏は、こうした巻き戻しが起こるとは予想していない。
米政府は、通常の方法による財政再建を選択することはなく、インフレ税による方法を選択するという。
だから、「インフレへの道は自動運転」だという。

サブプライムの初期、住宅ローン危機についてFRBは同じことを言っていた。
『心配は要らない、すべて大丈夫で、サブプライムを封じ込める。』
彼らは完全に間違っていて、金融危機になった。
今FRBは消費者物価・生産者物価について同じことを言っている。・・・
『心配するな、これは過渡的なものだ。』

シフ氏は、サブプライム/リーマン危機前にも危機到来を予想していた。
(もっとも、同氏はいつも危機を予想しているところがあるので、当たったとするかは微妙だ。)
今回もバブル発生を宣言している。
しかし、その帰結については、バブル崩壊というよりインフレ昂進に傾いているようにも聞こえる。

シフ氏は、他の資産クラスに比べ見劣りのする状況が続く金相場について、原因と先行きをコメントしている。

「金が上昇しない理由は、ほとんどの人たちがFRBを信じ、悪化する前にFRBがインフレの火を消してくれると信じているからだ。・・・
そうならず、インフレがどんどん悪化すれば、FRBは何も準備しておらず、その時こそ金価格が上昇を始めるだろう。」


-海外経済, 投資, 政治
-, ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。