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このままならインフレは上昇へ:アラン・グリーンスパン
2019年12月19日

アラン・グリーンスパン元FRB議長が、トランプ大統領のFRB批判、低成長、株価の決定要因などについて話している。


「まず、大統領がそういうことを議論すること自体が誤りだ。
FRBは高度な専門家集団だ。
彼らには経済の機能、その金融市場への影響、金利構造について、大統領よりはるかに優れた知見がある。
私が過去(FRBの)同僚たちに言ってきた最良のアドバイスは『無視しろ』だ。」

止まらないトランプ大統領によるFRB批判について、グリーンスパン氏がCNBCで不快感を示した。
不動産屋が低金利を望むのは自然なことかもしれないが、それが米大統領となると話は別だ。
大統領は2016年の大統領選の最中、なかなか利上げしないとしてイエレンFRB議長(当時)を批判していた。
バブル崩壊を恐れるオバマ大統領(当時)の要請でFRBが利下げを渋っていると、見てきたかのように主張した。
ところが、自身が大統領職に就くと、まったく逆の話をしだしたのだ。
公衆の面前でFRBに利下げを要求し続けている。

グリーンスパン氏は、政権が続ける貿易戦争についても批判的だ。
中国にイコール・フッティングを求めるための必要悪という言い訳にも賛成しない。

「貿易戦争に勝者はいない。
単に、誰が最も損失が少なかったかの問題にすぎない。
この特定のケースでは、米中の行動で米中のいずれがより傷つくか、私には明らかでない。
すべての人の厚生を最良のものとするには、関税を完全に撤廃することだ。」

グリーンスパン氏から見れば、貿易戦争への処方箋は自明なのだ。
米国が始めた戦争をやめるということに尽きる。
グリーンスパン氏がもっと心配する難題は別のところにある。
米国をはじめ世界の多くの国で進む高齢化だ。

医療技術が大きく改善し、それが引退年齢を以前より大きく引き上げた。
これにより、明らかにいわゆる社会保障に様々なプレッシャーが生じている。
データが明確に示しているのは、世界中で間違いなくそうした社会保障負担の上昇がGDPをクラウディング・アウトしているということだ。
それが次に、生産性を決める重要な要因であるGDI(国内総投資)に影響する。
生産性は生活水準が最も依存する要因だ。

生産性向上なくして賃金が上昇すれば、それはインフレを引き起こす。
インフレが進めば、名目賃金が上昇しても、実質賃金は上がりにくい。
これでは豊かになったとは言えない。
生産性向上は労働者の長期的な厚生にとって重要な要素なのだ。

グリーンスパン氏は、現在ほとんど心配されることのないインフレについて引き続き警鐘を鳴らしている。
インフレと景気後退が同時に起こるスタグフレーションのリスクがあるためだ。
米国の場合、急拡大する財政赤字がそれを後押ししかねないのだという。

今年米国は1兆ドルの財政赤字になり、どんどん増えている。
財政赤字拡大は通常かなり早く単位マネーサプライを上昇させ始める。
単位マネーサプライはインフレ率の決定的な要因になる。
米国では現在、実際のインフレ圧力がないように見えている。
しかし、このままさらに行けば、インフレ上昇が避けられない。

チャールズ・エリスは著書『敗者のゲーム』の中でインフレを「恐るべき、そしてあまりにも過小評価されている共通の敵」と表現した。
天災とは忘れた頃にやってくるものなのかもしれない。

グリーンスパン氏は最後に、開発中の株価評価システムについて言及した。
PERをひっくり返して益回り(EPS/株価)にし、その変動要因を分析するものだという。

過去数年程度で言えば、それは基本的に実質長期金利だった。
だから、それが今後のPERのありどころなのだろう。
問題は企業収益がどうなるかだ。
それは貿易摩擦に依存し、それが大きな要因になるだろう。


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