グリーンライト・キャピタルのデービッド・アインホーン氏が、今回のバブルはすでに弾けていると結論している。
人生の目的とは多数の側にいることではなく、狂気に陥ることを避けることにある。
アインホーン氏の3Qの投資家向け書簡の書き出しは、マルクス・アウレリウスの引用で始まっている。
理由は明快だ。
「狂気」とは、来年にかけて市場が噴き上がるとの世間のコンセンサスだ。
アインホーン氏は、これに乗っかることに戸惑っている。
「私たちは巨大なテック・バブルの真っ只中にいる。
私たちは2016年初めにバブルが来たと、早すぎる判断を下した。
当時そう考えた1つの理由は、1999-2000年のバブルの高みが人生に一回の経験であり、投資家はその愚かさを繰り返さないだろうというものだった。
明らかに私たちは間違っていた。」
アインホーン氏は率直に自身の読み違いを認めている。
それもそのはず、この読み違いによってグリーンライトは経験したことのないアンダーパフォームに陥ることになった。
状況を立て直すのに数年を要し、今も傷が癒えたとはいいがたい。
アインホーン氏は現在がバブルだと考えているが、市場がさらに上昇すれば再び出遅れるかもしれない。
それでも同氏の読みはバブルだ。
「アナリストやコメンテーターの中には、今回のバブルを以前のものと比較しようとする人がいる。・・・
こうした設問は愚かな誤りだ。
バブルは二度と全く同じ形では現れないものだ。」
人が直近を過去のバブルと比べる時、多くの場合、違いを探そうとしている。
(今よく言われるのが、高バリュエーションと低金利の程度だ。)
何か見つかれば、過去とは違うから今回は大丈夫、となる。
確かにそういう議論にはあまり意味がないのかもしれない。
バブルで重要なのはバリュエーションではなく、市場心理だ。
バリュエーションが重要でなくなる、これがバブルを生む。
アインホーン氏は、前回の読み違いから4年経って、今はバブルであることがコンセンサスになっていると話す。
何とも奇妙ではないか。
確かに現在がバブルとの認識はコンセンサスかもしれない。
しかし、まだ上がる可能性が高いというのもコンセンサスのように感じられる。
するとコンセンサスは、バブルがまだ膨れる、ということになる。
ならば問題は、いつまで、だ。
アインホーン氏は、2000年のテック・バブルについて、ピークをだいぶ過ぎた後でも、それがピークだったかはっきりしなかったと振り返った。
その上で、バブルのプロセスを分析的に解説する。
- みんなが参入
- 最後のショートがカバーされる
- 最後の買いが出来る
- 下げが始まる
- 心理が貪欲、自己満足、心配、パニックへと変化する
アインホーン氏は、バブルがすでに弾けたと考えている。
私たちの仮説では、外れるかもしれないが、2020年9月2日がピークであり、バブルはすでに弾けたというものだ。
もしもそうなら、投資家心理は貪欲から自己満足へ変化する過程にあることになる。
したがって、私たちはショートのポジションを調整し、2流企業やかなり高いバリュエーションで売買されている最近のIPO銘柄を中心に、新たなバブル銘柄群を追加した。
注目したいのは、パートナーシップ全体のポジションだ。
ロングが138%、ショートが80%だという。
つまり、ネットでロングだ。
結果、第3四半期のリターンは5.9%(S&P 500は8.9%)だった。
この四半期だけで見れば、ロングが足りなくてアンダーパフォームしたということになるが、ロング/ショートのヘッジ・ファンドにそれは酷だろう。
まだ上がる可能性に備えてネットでロングにしておく。
本格的な下げ相場が来れば、ショートしている銘柄が平均を超える大幅な下落をすると目論んでいる。
それこそが刈り取りの時期であり、忍耐強く待っているのだろう。
でも、バブルとは最終局面こそ上げペースが急になる。
好きでやっているのだが、たいへんな仕事だ。