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いつか市場がFRBに挑む時が来る:モハメド・エラリアン
2021年10月2日

アリアンツ経済顧問のモハメド・エラリアン氏は、FRBの金融政策正常化が後手に回ることで起こりうる深刻なリスクについて解説している。


(FRBにとって)窓が少し閉じつつあるとは言わない。
秩序だったテーパリングについて、大いに閉じつつあると言いたい。
FRBはいつでもテーパリングを実施できるが、素早くやらないと債券市場の混乱を大きくしてしまうだろう。

エラリアン氏がBloombergで、従前どおりFRBの金融政策正常化が出遅れていると指摘している。
残された猶予はどんどん減っていると危機感を滲ませる。
このままだと後の債券市場の混乱を大きくし、それが株式市場に波及することになるという。

需要の問題でなく供給の問題だ。

エラリアン氏は、米インフレが一過性とはいえないと主張し続けてきた。
足下の高インフレの要因を単純に需要増と供給制約の組み合わせと考えても、金融緩和で解決できる点はそう多くない。
供給側の問題は「世界レベルの問題」であり、FRBが金融緩和をしようが、すぐに供給が増えるわけではない。
インフレを抑えるとすれば、むしろ金融緩和の手を緩めるべきとなる。
エラリアン氏は金融政策正常化が3つのリスクを減らす効果があると話す。

  • インフレ圧力
  • 経済により正当化できない資産インフレ
  • FRBが急激な引き締めを迫られるリスク

エラリアン氏の危機感は強い。

「誰もFRBに急ブレーキを踏んでほしくないし、FRBにテーパリングや利上げを加速してほしくない。
もしもそうなってしまえば、実体経済・企業収益・貧しい人たちが犠牲になってしまう。・・・
潜在的結末の確率分布の両側を見てみると、今のところリスクは速すぎるより遅すぎる方にあると思う。」

エラリアン氏は、現在の米市場で注目を集めるスタグフレーションのリスクについて尋ねられると、その兆候が見られ始めていると指摘した。
仮に、現実のものとなれば、政策決定者を無力化し、厄介な状況になると危ぶむ。
ただし、まだそうなると決まったわけではないとも話す。
構造面・インフレ面の両方で政策を調整すれば、回避は可能だという。

エラリアン氏は、行動経済学的な側面からもインフレを論じている。
FRBは今でもインフレを一過性と言い続けている。
しかし、そのインフレ予想が再び上方修正される確率が高まっている。
FRBのインフレ予想への信頼度が下がり、インフレ期待へのアンカーが弱まり、人々の心理を変化させる可能性がある。

FRBはインフレの力学を理解していない。
これは必然なんだ。
リスクはいつか現実となり、市場がFRBに挑む時がやってくる。

エラリアン氏は最悪の場合、「債券市場が無秩序に調整するリスクがある」と話している。
むろん、債券が無秩序な動きをすれば、それは他の資産クラスに広く波及することになるのだろう。

心理の変化は金融市場だけでなく実体経済でも起こっている。
FRBは一過性の定義をどんどん長期化しているが、その結果、一過性でありながら、一過性の刹那の間に人々の心理や行動が変化を始めている。

エラリアン氏は、実体経済でもインフレを押し上げる心理・行動の変化が見られるという。

至るところで値上げが起こっており、企業は値上げに自信を深めつつある。・・・
本当の試金石は、インフレ期待・価格設定行動・賃金設定行動が変化するかどうかだ。

エラリアン氏は多くのCEOと会話をする中で、すべての経営者が足下の供給制約が来年まで続くと考えていると言い切った。
制約が解消するのではなく、持続することを前提に計画を作っているのだという。
これがスタグフレーションの心配を引き起こす。
供給制約がインフレだけでなく成長にも悪影響を及ぼす可能性があるからだ。

「このため、彼らは、需要があっても生産の水準を維持できるか心配し始めている。
これは長引き、容易に解消できない。
不幸なことだが、利益が消し飛び、売り上げが消し飛ぶ。」


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