海外経済

【雇用統計】ゴールドマン・サックス、ブラックロックのコメント

米労働省が4日発表した5月の雇用統計についてのゴールドマン・サックス ヤン・ハチウス氏、ブラックロック リック・リーダー氏、ジェフリー・ローゼンバーグ氏のコメント。
FRB金融政策の方向性を左右する足元のインフレの持続性について、微妙な温度差が感じられる。


5月の米雇用統計は

  • 非農業部門雇用者数: 前月比559千人増(市場予想650千人増(Reuter)
  • 失業率: 5.8%(前月比0.3%改善)
  • 平均時給: 前月比0.5%増、前年同月比2.0%増

雇用者数が予想を下回ったものの、平均時給の回復が目立っている。

ゴールドマンのハチウス氏はBloombergで、特に3点を指摘した。

  • 季節調整が逆風になっており、季節調整前なら雇用者数は月あたり約1百万人増えている。
  • 平均時給の大きな伸びと他のやや失望した数字が示すのは、労働供給が課題であること。
  • 労働参加率の改善の鈍さも労働供給が課題であることを示している。

私がここから引き出した結論は、これら多くの課題がおそらく一過性であるということ。
秋になれば、おそらく労働供給は大きく増加するだろう。

ハチウス氏は、足元の高インフレを(FRBと同じく)一過性のものと見ている。
今後、パンデミックが終わり、子供が学校に戻り、失業給付の積み増しも終われば、働き手が徐々に職場に戻るとの予想だ。
多少時間がかかるものの、労働面での供給制約が及ぼすインフレ圧力はじきに解消していくとの考えだ。

ブラックロックのリーダー氏の読み方は少しニュアンスが異なる。
同氏はBloombergで、特に2点を指摘した:

  • 過去4か月の季節調整前の雇用者数は「不気味なほど」1月あたり1百万人になっている。
  • 平均時給は強い。

リーダー氏は、これら事実が明確なメッセージを発しているという。

困難な(労働)供給のダイナミクスが働いている。
さらに私が思うのは、こんなにたくさんの人数処理できないということ。
人事部がどれだけ忙殺されていることか。

リーダー氏は、ハチウス氏がレジャー・ホスピタリティのセクターについて述べたデータを引用した。
同セクターでは年率換算で20%ペースでの増員を進めている。
これはもはや加速しようのない率のように思える。

ジェレミー・シーゲル教授は先週のポッドキャストで、小さな雇用者数こそ供給制約の継続を示しインフレ的と指摘した。
これは、タイトな労働市場 → 賃金上昇 → インフレ的 という従来の見方と逆方向のものだ。

リーダー氏の発言は、供給制約がある程度長く続くとの予想を述べたものだろう。
ただし、インフレが一過性か否かの見通しについて述べたものではない。
この観点については、リーダー氏の同僚、ローゼンバーグ氏がBloombergでコメントしている。

私たちは長い間(労働者の)ミックスの変化によって歪められていたと考え、平均時給の数字を無視してきた。
ミックス変化にもかかわらず平均時給が上昇したことで、供給側の制約が賃金を押し上げるとのナラティブを後押しするだろう。

人々が雇用を得て、全体の賃金水準も上昇している。
職を得たばかりの人の時給が、全体の時給を押し上げるだろうか。
もしそうでないなら、全体的にかなり賃金水準が上がっている可能性もある。
このナラティブは、インフレをより持続的なものにするかもしれない。

賃金押し上げは、一過性のものがより持続的なものになるかとの議論に油を注ぎ、続けさせるだろう。
それ(賃金押し上げ)が、賃金に対する期待に影響を及ぼすからだ。

労働者が、世間の賃金の上昇を予想すれば、自分についてもより多くの賃金を要求したくなるだろう。
それが、賃金上昇の1つの要因となる。
次に立ちはだかるのが、インフレの壁だ。
賃金上昇がインフレを跳ね返すことができるか。
もしもできなければ、スタグフレーションまたはディスインフレまたは格差拡大のリスクが高まることになりかねない。


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