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東京証券取引所アローズ 【輪郭】ボーナスの投資を実り多くする方法
2019年11月12日

サラリーマンのみなさんのボーナス・シーズンが近づき、毎回聞かれる質問についてあらかじめお話しておきたい。


今ならどういう投資をすればいいですか?
株などリスク資産は上がるんですか、下がるんですか?

まず2文目への私の答は「わかりません」だ。
上がるとわかっているなら、市場はとっくに上がっているだろう。
下がるとわかっているなら、市場はとっくに下がっているだろう。

仮に私がどちらかに山を張っている場合でも、答は変わらない。
そう答えないと、答を聞いた側が投資に対して誤った理解をしてしまうからだ。

さらなる上昇の「リスク」が出てきた

そうお断りした上で、本稿執筆時点(11月10日)で私が張っている山を明かすと《さらに上げる可能性がある》というものだ。
米市場の心理の改善にともない《最後のひと上げ》のような上昇が起こってもおかしくない。
この確率は10月末にいっそう高まった。

ただし、過剰な期待は禁物だ。
仮に米市場が最後のひと上げを演じるとしても、高々あと20-30%だろう。
このために新たにリスク・テイクすべきなのか。
答はその投資家のリスク選好によるが、私に言わせればNoだ。
もっとも1990年代終盤のようにバブルにまで発展するなら話は別。
しかし、もちろんこちらの予想確率は最後のひと上げよりかなり低いし、その後の下方リスクも大きい。

まずは投資と投機の区別を

筆者は投資(投機を含めて)に最善のやり方など存在しないと考えている。
だから、個々の投資家が信念にしたがい自身のやり方を貫けばいいと思う。
ただし、1つ強くお勧めしたいのは

  • 投資: リスク/リターンのトレードオフを意識する、リスク回避的な営み。
    つまり、高いリスクをとるのは、それに見合う高いリターンが見込まれる場合に限ること。
  • 投機: 同トレードオフを考えない、リスク愛好的な営み。
    つまり、高いリターンを得るために高いリスクを積極的にとりにいくこと。

を区別すること。
どちらがいい悪いの話ではなく、区別して管理することが大切だ。

サラリーマンのみなさんで言えば、老後資金まで見据えた財産形成は、投資によるべきだ。
投機は、その内容・金額を限定し、結果に期待をかけずに楽しめばいい。
もちろん投機で勝利すれば、その成果を投資に振り分けてもいいし、少しゴージャスにお祝いしてもいいだろう。

「Buy low, sell high」の自動化

私は、ギャンブルを含む投機についてはまったく見識がないので、以降は息の長い投資について話す。
現状の認識は、

  • 景気後退やそれに先行するであろう弱気相場が近づいている可能性がある。
  • その一方で、最後のひと上げがまだ残っている可能性がある。

つまり、少々大きめの幅で下げたり上げたりする可能性があるということだ。
こうした場合(あるいは私の場合は一貫して)バランス型のポートフォリオを推奨している。
自身にはマーケット・タイミングの能力がないと自認しているからだ。
バランス型やリスク・パリティについては誤解も多く、以下、バランス型と一般の分散投資の違いを説明しよう。

ある人が株式と債券(含む預金・現金)を1:1で分散投資しようと考えたとする。
バランス型でない場合、仮に株価が2倍になると、比率は2:1になる。
これは当初考えた運用方針の1:1と乖離している。
しかも、株が高い時に株の構成比が高くなる。
これを良しとするか、投資家は意思決定しなければいけない。

これがバランス型の場合、リバランスという作業が入る。
株を0.5売却して債券を買う。
結果、1.5:1.5=1:1となる。
これは最初決めた方針通りであり、自動的に「Buy low, sell high.」(安く買って高く売れ)になっている。
株が下がってしまった場合も、順序が逆になるが同様のことが起こる。

むしろ日本株に向いている?

もちろん比率は1:1に決まった話ではない。
米国では(少なくとも以前は)80:20などが好まれていたようだ。
あまり煩雑にリバランスをするのもコストがかかるかもしれないから、数か月に1回見直すようにするといいだろう。
仮に株が上昇した場合でも、ボーナス(ニュー・マネー)を債券に入れることでほぼバランスする場合もあろう。

この戦略のいいところは、上げても下げても「Buy low, sell high.」につながる可能性がある点だ。
株価が上下するごとに「Buy low, sell high.」が実現していく。

逆に、市場が長期的に一本調子でいずれかの方向に動いていく場合、この戦略はアンダーパフォームする。
「Buy low」または「Sell high」のいずれかしか起こらないためである。
そう考えると、皮肉なことだが、この手法は上げ基調の米国株より30年近く新高値を付けられない日本株に向いているのかもしれないと思えてくる。

実際の運用は、投資家が目標とする構成比を決めたところから始まる。
あとは(指数連動ETF等も含めた)銘柄選びになる。
その後は多少の銘柄入れ替えを検討しつつ、ほぼ自動操縦だ。

それでもマーケット・タイミングしたい

多少マーケット・タイミングしたい投資家は、まず、もう1回リバランスの意味を思い起こすとよい。
株の高値圏では、株が上がったことにともなうリバランス時にいくらか売ってきたはずだ。
つまり、マーケット・タイミングと同方向のトレードがすでに多少なされている。
これ以上必要なのかを自問するとよい。

それでもさらにマーケット・タイミングしたい投資家は、目標とする構成比を少し変えることで実現できる。
ただ漫然とポートフォリオの中身を売買するより、構成比を変え、それに応じてリバランスする方が、はるかに自分の取っているリスクを把握しやすいはずだ。

最近ではバランス型の投資信託も人気だという。
しかし、ある程度の額のポートフォリオを運用しているなら、投資信託に頼らないで自身で行うことを検討すべきだ。
資産のすべてをバランス型の投資信託に投じるなら、それは悪くないアウトソーシングかもしれない。
しかし、投じるのが資産の一部なら、本当にその投資家の資産全体についてバランスがとれているのか、わからなくなる。
むしろ、みずから毎月の運用報告書を見ながら、バランスをチェックする方がいいように思う。
投資家なら、それぐらいのことは大した追加的負担なくできるはずだ。




山田泰史山田 泰史 横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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