
【輪郭】「総括的な検証」で予想されること
7月28-29日の日銀金融政策決定会合の結果を見直しておきたい。
「総括的な検証」を行うと宣言した日銀は、どういう変化を想定し、何を検証するのだろうか。(浜町SCI)
本題に入る前に、会合で何が決定されたかを列挙しておく。
変更点からうかがわれること
ETF買入れ増額: 年間残高増3.3兆円 → 6兆円
⇒ 株式市場への悪影響を回避したい。
外貨調達支援
総枠拡大: 120億ドル → 240億ドル
担保貸付: 担保用の国債を当座預金を見合いにして貸付
⇒ 企業・金融機関への悪影響を排除したい。
政府の経済政策(財政政策・構造政策)との相乗効果
⇒ 世の中のヘリコプター・マネー期待へのある程度の回答
次回、「経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行う」
変更しなかった点からうかがわれること
「量」(金融市場調節方針)
⇒ マネタリー・ベース拡大の効果が逓減しきったと見ているか、あるいは買いたくとも市場が枯渇したか?
「質」(資産買入れ方針)のうち、長期国債、J-REIT、CP、社債等
⇒ 債券利回りの低下の効果が逓減しきったと見ている?
「金利」(政策金利)は▲0.1%を据え置き
⇒ 半年たったマイナス金利政策の効果に疑問を持っている?
2%インフレ目標を維持
⇒ 強い意志の表れか? 変更するための地ならしをしたいのか?
シナリオA: インフレ目標の柔軟化
日銀が次回会合(9月)で何も大きな変更を行わない可能性はあるだろうか。
その場合、2%のインフレ目標もその達成時期(目途)も維持されることになる。
これが実現可能でないことは、世界中が知っている。
いや、唯一実現する手段がある。
狭義のヘリコプター・マネーだ。
日銀の実質破綻と引き換えに高いインフレを手に入れるのである。
ただ、この手段が選択される可能性は極めて小さい。
さすがの政府・日銀でも、狭義のヘリコプター・マネーを法改正なしに行うとは考えにくい。
だから、やはり現在のインフレ目標の達成は不可能だ。
9月にこれを変更しなければ、究極のフォワード・ミスガイダンスが当面続くことになる。
そうなると、日銀が心変わりしても、簡単には変更できない。
想定していなかった新たな混乱が起こるまで待つことになる。
それは、金融政策の説得力からも、日銀の体面からもあまりにもハイ・リスクだろう。
そう考えると、予断は許さないものの、何らかの変化が起こる可能性が高いだろう。
2%目標を引き下げることはハードルが高いだろうから、達成時期を柔軟化し、マイルストーン(例えば、基調的な1%を来年実現するなど)を提示することになるのではないか。
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