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【輪郭】「リスク・オフの円安」は早計
2020年2月21日

ほとんど動くことのなかったドル円が急に円安に振れたことで、リスク・オフの円安ではないかとの思惑が広がったが、これは勘違いだろう。(浜町SCI)


19日1ドル109円台から円安ドル高が進み、20日に入って一時112円台をつける場面があった。
日経などは、円の「安全資産」としての人気が相対的に低下しているとの論調だ。

もちろん、円は安全資産ではない。
リスク・オフで円高になるのは、円が低金利でありキャリー取引の調達通貨であるからだ。
リスク・オフでキャリー取引が巻き戻す時に円が買われるのである。

その円高が今回起こっていないから、リスク・オフの円安ではないか、という話が出ている。
しかし、これは全体像が見えていない考え方だ。
今回の円安ドル高では米国株は上昇している。
ここを見れば典型的なリスク・オンの円安にすぎない。
リスク・オフの円安を心配するのは、日本国内の事情ばかりに目をとられているからだ。

確かに、円高が進みにくい環境変化が起こっている。
また、将来、リスク・オフで円安になる危険性もある。
これは日本からの資本逃避を示唆し、大きなリスクである。
しかし、筆者には今がその瞬間だとはまだ思えない。

今回の円安はこんな感じだ:
海の向こうはリスク・オン、こちらはリスク・オフ。
綱引きをしたら今回は向こうが勝った。
でもまだ中長期的には引っ張り合いが続いている。

それにしても、日本人の弱気ぶりは徹底している。
米市場があれほど浮かれているのに、日本市場には浮かれたところがほとんど見えない。
日本株の投資家は気づいていないのか。
米国株が上げているのは業績に対する期待からではない。
金融緩和にともなう流動性相場でバリュエーションが拡大しているためだ。
なぜか日本ではそれが続かない。

昨年・昨年度の経済・企業業績には米中摩擦・消費増税の影響が乗っている。
1-3月期は消費増税・コロナウィルスの影響を受けている。
米中摩擦・消費増税の影響(の少なくとも一部)は時間とともに確実に消えていく。
コロナウィルスも、よほどの極端な事態でないかぎり、じきに収束するだろう。
そうなれば、相応のペントアップ・デマンドが発生するのではないか。
世界的な緩和的金融環境でそれが起これば、各国の経済・企業業績はどうなるだろう。

そうなる可能性があると思うなら、少し日本株にも張っておいていいのではないか。
ところが、国内投資家にはそういう元気がないようで、外国人投資家の出入りによって株価が上下する展開が続いている。
外国人が出ていくと、株が下がり円安が進むというわけだ。

日銀はまるで米市場のために金融緩和を行っているようなものではないか。
円安は日銀の狙いの1つなのかもしれないが、マネーの行き先が外国では喜びは半減する。
今や日本は、リスク・オフの円安をおびえる時代になりつつあるのだから。




山田泰史山田 泰史 横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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