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東京証券取引所アローズ 【解題】やっぱり当面「現金はゴミ」ではないのだろう
2022年1月20日

このところ、短中期的には「現金はゴミ」でないように思うことが多くなってきた。(浜町SCI 1月19日)


以前書いたコラムに関連して1つ理解が進展した点があるので、補足させていただこう。
投資家が陥りがちな3つの『常識』」の中で、超長期的な経済・市場の歪み(特に債務と金利)の解消法には2つがありうるとしたものだ。
デフレ的解消とインフレ的解消だ:

  • デフレ的: デフレによりお金・信用が収縮する。この場合、資産デフレが起こる。債務は資産と表裏一体のものなので、過剰な債務が解消に向かう。
  • インフレ的: 資産価格はさほど下がらないが、ファンダメンタルズが追い付いてくる。経済のキャッシュフローが債務を正当化する。

その上で、弊社は前者をメインシナリオとしていると述べた。

そもそも、この2つに分類し予想する考え方はブリッジウォーター・アソシエイツのグレッグ・ジェンセン氏が紹介したものだった。
同氏は今回の解消がインフレ的になると書いていた。
弊社を含む多くの読者は思ったはずだ。
もしもインフレ的な解消シナリオならば、現金やフィクストインカムをいくらか持つ理由はなくなる。
リスク資産にフル・インベストしないといけない、と。
インフレ的解消は超長期に1度のイベントでもあり、真面目な話を差し置いてもワクワクするところがある。
エキサイティングなシナリオについつい重きを置きがちなのが人間のサガというものだ

ところが、年初そういうバイアスを吹き飛ばす発言が、ブリッジウォーターの総帥レイ・ダリオ氏から出てきた。
現在経済・市場で起こっている目立った変化は超長期サイクルによるものではなく、7-8年前後のサイクルによるものとの見方だ。
仮にこの見方が正しいなら、次の歪み解消がデフレ的になりうる余地が出てくる。
つまり、いつものように景気後退が訪れ、その少し前から資産価格が下落を始めるというシナリオだ。
(超長期サイクルの最後に起こるインフレ的解消はまだその先となる。)

幸いにも、これは弊社がメインシナリオと呼んでいたものなのだが、仮にそうなるなら、現在市場から逃げ出し始めた投資家の行動にも一理あるのだろう。
もっとも、私たちは2つの理由から大きく売る予定はない。

  • まだ上がる可能性がある:
    過去の米市場、それに連動する日本市場の事例を見る限り、米利上げ前から逃げ始めるのは早すぎるように思う。
    ただし、現在はすべて異例ずくめだから、前例通りにならない可能性ももちろんある。
  • バランス型ポートフォリオ:
    私たちはポートフォリオのバランスを一定にするように運用している。
    したがって、株価が下がっている今、私たちは株式の構成比を保てるように(売るのとは逆に)買っている。

ちなみに、デフレ的解消となるなら、為替も円高が連想される。
(他通貨との強弱は別の話。)
最近円安への心配の声が高まっているが、いつか来る中期的サイクルの終わりにおいては、やはり株安・円高なのではないか。
過去と同様、円現金は強力な安全資産として機能するかもしれない。

投資のやり方には絶対の正解はない。
ただし、かなりはっきりした間違いはある。
金利上昇で市場が寛容さを失うのなら、極力間違いを減らすことが投資家にとって重要になるだろう。




山田泰史山田 泰史 横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

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