債券王ことダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏がジェローム・パウエル議長のレトリックに噛みついた。
パウエル議長の言う、FRBのバランスシート拡大に限度はない、というのが正しいなら、何で税金について悩む必要があるのか?
議長の宣言に暗黙のうちに含まれているのは、徴税システムすべてが国家による資源の無駄遣いであるということだ。
ガンドラック氏が30日ツイートした。
同氏はこのところずっと怒っている。
コロナ・ショックに対処するための金融・財政政策が過剰であり手法にも問題があると怒っている。
この不人気なメッセージをひたすら発信している。
中央銀行のバランスシート拡大に限界がないとするなら、どこまでドルを発行してもみんなが変わらず受け取ってくれ価値も落ちないのなら、税金など必要ないことになる。
かつてのジンバブエと同様、自国通貨を発行し、財政支出に充てればいいだけだ。
米ドルが基軸通貨であるという特殊要因を加味したとしても、パウエル議長のこの発言は論理上は明らかな嘘と言えるだろう。
とはいえ、パウエル議長がそれを気づいていないはずはない。
承知の上で、市場を安心させるためにブラフをかけているのだ。
今回のコロナ・ショックでは、市場がどうしても強気でいたいことも助けとなり、こうしたブラフはうまく働いてきた。
ただ、真実でないフォワード・ガイダンスが発せられる時、市場は危うくなるのかもしれない。
少なくとも言えるのは、FRBがそこまで追い込まれているということだ。
多くの人が裏の裏まで理解していながら、それでも危機感を隠しきれない。
FRBのバランスシート(青)とマネタリー・ベース(赤)
この異様なFRBバランスシート急拡大が良い結果だけをもたらすと誰が信じるだろう。
産み出されたマネーは、実体経済または金融経済に向かい、いずれかあるいは両方で価格上昇を引き起こすのではないか。
もしそうなれば、それは過去10年あまりと同様、米社会の歪みを大きくする方向にも働くのだろう。