キニコス・アソシエイツのジム・チャノス氏が、暗号資産について不吉な予想を語っている。
私は金融の世界のこの状況を『詐欺の黄金時代』と呼んできた。
チャノス氏がInstitute for New Economic Thinkingのインタビューで語った。
同氏はエンロンなど不正を働く企業を息長く空売りする手法で有名。
大学で金融詐欺の講義も続けている。
チャノス氏が戦ってきた投資先の1つは暗号資産だ。
同氏は、ウォール街が暗号資産のETF等に熱心な理由として、往復4%にも上る取引手数料にあると指摘する。
機関投資家はそんなに大きな手数料を払わないので、個人投資家が必要となり、だからETF等が目論まれているという。
それがまた、投資家が暗号資産に対し強気を続けられる理由にもなっている。
ところが、その思惑がうまくいくとは限らないと示唆している。
「もちろんパラドックスなのは、ブラックロックやバンガードなどがETFをローンチすれば、それは手数料の上昇ではなく低下の圧力になる。
・・・ETFの取引手数料はミューチュアル・ファンドや株式と同程度で、これらはゼロに収束してきた。」
手数料の大きさが業界を引きつけたが、ETF等の普及で逆に魅力が失われていくというシナリオを示唆しているのだ。
今月2日、暗号資産交換業者FTX創業者のサム・バンクマンフリード被告が、ニューヨーク州連邦地裁において詐欺など7件の罪で有罪判決を受けた。
FTXの預かり資金を自身が経営するアラメダ・リサーチに移すなどし、両社ともに2022年破綻した。
この資金は高リスク投資・不動産購入・政治献金などに使われたという。
チャノス氏はこの事件に関し、破綻の7か月前のBloombergによるバンクマンフリード被告へのインタビューを回想している。
「私にとっては爆弾発言だった。
バンクマンフリードは基本的に暗号資産のエコシステムを巨大なポンジ・スキームと呼んだんだ。
私はクラスの学生に、業界のリーダーが自分の業界をポンジ・スキームと呼ぶのはとても珍しいことだと話した。」
チャノス氏は以前から、金融詐欺のサイクルについて持論を持っている。
金融詐欺が金融サイクルに追随する傾向があるという考えだ。
サイクル前半の緩和的金融環境の期間、詐欺が表面化することなく助長され、終盤の引き締め期以降に次々と表面化していくという。
これは詐欺でなくとも暗号資産にも言えるらしい。
これには歴史的にパターンが存在する。
代替的な貨幣、代替的な支払形式、代替的な銀行システムは概して、詐欺と同様、金融サイクルの後を追うものだ。
みんなが儲かり資産価格が上昇している時は、それらが容易に上昇しているのを見て買ったりお金を付けたりするんだ。
リスク資産の本格的な弱気相場はまだ来ていない。
もし今後そうなるなら、金融詐欺にしても暗号資産にしても、本格的な波乱はそれからということなのだろうか。