海外経済 投資

【短信】財政と金利が米国を恐怖へ:ジェフリー・ガンドラック

ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏が、金利・インフレ・ドル相場・米景気の先行きについて語っている。


巨額の財政赤字と国の債務の金利上昇はすべてのアメリカ人を恐怖に陥れるだろう。
・・・
現状のFF金利の水準を仮定すると、国の債務の金利は、長い目で5.5%まで上昇しうる。

ガンドラック氏がWealthDFMで、財政悪化の行き着く先について警告している。
同氏はかねてから、足元の高い成長率について、財政出動で下駄を履いているだけと話してきた。
一方、先食いのツケはいつかやってくる。

米国の財政悪化がすさまじい。
IMFの推計でも、パンデミックを乗り越えたはずなのに当面高止まりすると予想されている。
政府純債務対GDP比率も、100%を超えてさらに上昇を続けると推計されている。
フランスを抜き、日本やイタリアの後を追うような展開だ。

これでも、米国はこれまでどおり、世界の投資家のユートピアであり続けられるのか。
ただし、日本と1つ大きく異なるのは、米国はこのインフレ上昇サイクルにおいて果敢に急激な利上げを実施した点だ。
財政には心配もあろうが、金融政策には緩和余地があるのだろう。

ガンドラック氏は、米国にとっての通貨・インフレの要点を述べている。

FRBが利上げを続けるようなら、それはありえるが、あるいは国の債務が増えるなら、それは間違いなく起こるが、この問題はさらに悪化する。
米ドルの将来、潜在的な制御不能なインフレは、予算と歳出をコントロールできるかにかかっている。

米国では(十分か過剰かはわからないが)すでに相当な金融引き締めが実施されてきた。
残る心配は財政になる。
日本の場合、金融引き締めは緒に就いたばかり。
財政も再建を求めるのが禁句のような雰囲気にある。
やはり、日本の置かれた状況は厳しい。
ガンドラック氏がどんなに嘆いても、米国の方がよさげに見える。

ガンドラック氏は、足元の景気を支える一因がパンデミック時の給付金、ローン返済・納税の猶予であると指摘し、これらが国債発行増を通して金利上昇を引き起こしていると解説する。
逆に、それが終われば、景気押し上げ要因が減り、金利上昇圧力も減るという。
つまり「今後6か月で債券(価格)の上昇につながる可能性がある」という。
また、インフレも収まりつつあるとして、今後の見通しを述べている。

「年末にかけて3.5-4.0%の間にとどまるだろう。
上昇してきたエネルギー価格しだいでは、来年後半約2.5%まで下がる可能性がある。」

財政悪化と金利上昇を心配するガンドラック氏にしては、インフレについては楽観しているようにさえ見える。
もしも2.5%まで下がるなら、2%物価目標とそこそこすり合っていると主張できなくもない。
こうしたインフレ低下を予想するのは、ガンドラック氏が景気後退入りを予想しているためだ。

失業率対同12か月移動平均は、確実に交差しそうに見えるが、これは過去景気後退入りと同時に起こっている。
この数字で50 bpの交差が起こると、過去常に景気後退入りしてきた。
現在は40 bpで、そう遠くない。
このトレンドから、私は交差と景気後退が2024年前半に起こると予想している。

なお、ガンドラック氏の主要フィクストインカムに対するスタンスは以下のとおり。

  • 長期米国債: 景気後退に向け、短期で選好。50%の価格下落により反転上昇の可能性。
  • MBS: スプレッドが拡大し、リスク調整後でとても安い。投資適格社債と比べ割安。

-海外経済, 投資
-, , ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 本サイトでは、オンライン書店などのアフィリエイト・リンクを含むページがあります。 その他利用規約をご覧ください。