行動経済学の研究で2017年ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授が、企業活動におけるアメとムチのバランスについて語っている。
企業活動において、マイナスのボーナスの例があるかと言えば、私は知らない。
金融サービス産業では、ほとんどすべての人が所得の大きな部分をボーナスとして受け取る。
しかし、その返還でさえ稀だ。
セイラー教授がBloombergで、企業活動ではもっぱら正の強化が用いられていると指摘した。
平たくいうなら、人を動かすのにムチではなくアメばかりが使われるという話である。
これは何も企業活動だけの話ではない。
人間の社会のあちこちで《やったもの勝ち》になりすぎているところがある。
前向きに行動するのはすばらしいことだが、その結果にも相応の責任を負うべきだろう。
勇気を称賛するあまり、酷く拙い行動さえも罰しないのはやはりおかしい。
セイラー教授は、アメばかりが配られ、ムチが正しく振るわれない状況を放置すべきでないと話す。
状況が改善しない背景を端的に説明している。
金融危機で起こったことのいくつかは、そのお金を返還させる責任を負わせていたなら、起こらなかったかもしれない。
つまり負の強化はとても強力だが、みんなそれが嫌いだ。
だからそれが用いられることがめったにないんだ。