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【短信】米10年債は少し売られすぎ:ビル・グロス

ビル・グロス氏が、株式・債券・インフレについていくつか目の子計算を語っている。
近時の長期金利上昇で、債券投資家が金融メディアで引っ張りだこだ。


「1年半前にPERは20倍だった。
そこから、実質金利は・・・350 bp上昇した。
予想するわけではないが、仮に株式益回りが5%から8.5%になれば、PERは今12-13倍に下がるはず。」

ビル・グロス氏が、金利上昇にともなう債券と株式の均衡の変化を目の子計算で説明した。
同氏は、現実はこれほど単純ではないと断った上で、定性的な方向性はこうなるはずと説明した。

グロス氏は債券市場に織り込まれた期待インフレ率であるブレークイーブン・インフレ率についても尋ねられている。
同インフレ率が2.0-2.3%レンジで安定していることを「驚き」とし、3%程度であるべきと話した。
実際、同インフレ率は名目・実質金利ともに上昇する中でほとんど上昇していない。

10年のブレークイーブンインフレ率(青)、10年名目金利(赤)、10年実質金利(緑)
10年のブレークイーブンインフレ率(青)、10年名目金利(赤)、10年実質金利(緑)

「この先(インフレ率が)2%まで下がるのはとても難しい。」

実績のインフレ率が2%に近づかない状況が続くようなら、ブレークイーブン・インフレ率も現実的な水準に調整し、この場合は拡大するとの示唆であろう。
これは、名目金利を押し上げるか、実質金利を押し下げるかのいずれかになる。

グロス氏は、米10年債利回りについても目の子計算を披露した。
仮にFF金利が長い目で見て3.0-3.5%に収束すると予想するなら、期間プレミアムを1.00-1.25%と見て、現状の金利水準が説明できる(上限のケース)。
したがって、10年債利回りが5%に向けて上昇するなら「すばらしくお値打ちとは言わないが、そこそこお値打ちだ」という。
裏返せば、最近の5%に向けた金利上昇がやや行き過ぎとの考えだ。

債券自警団、一部は莫大な金額の債券ETFを保有する個人投資家たちだが、彼らは先週あたり保有するETFの価格が2-5%下落したのに恐怖を感じ、群れをなして売ったのだろう。
5%に向けて少し売られ過ぎの市場になっている。


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