ビル・グロス氏が、来年の米株式・債券市場について「oomph」(活気)を失うと、やや弱気の予想を述べている。
(法人減税が)経済に及ぼしてきた1%の(経済成長)押し上げ効果を維持するには・・・財政赤字をさらに1兆ドル拡大しないといけない。
さもないと経済は1%だけ減速する。
グロス氏がThe Financial Timesに、来年の米経済について語った。
トランプ政権が2017年末に講じた1.5兆ドル規模の減税は米経済・市場を大きく押し上げたが、その代償として財政赤字は年1兆ドルあまりまで拡大した。
刺激策の恩恵はほぼ出尽くし、新たな刺激策なくしては成長率の押し上げ分を維持できないとの指摘である。
日本の一般会計予算を超えるような莫大な金額、財政赤字を増やしても、米成長率は1%しか増えない。
乗数効果が得られにくい経済では、財政刺激策は需要の先食いにしかならない。
大きく先食えば、後の落ち込みも厳しくなる。
いつまでも先食いを続けようにも、債務拡大をともなうために、そうそう長くは引っ張れない。
グロス氏は金融政策にも多く望むべきでないと匂わしたようだ。
各国の中央銀行が、長く続く低い預金金利の及ぼす影響について神経を尖らせていると指摘している。
グロス氏の2020年見通しは次の通り。
- 米長期金利: 年末1.75%。
- 米国株: 横ばいから10%下落。
天然ガス・セクターを選好するとし、次の2銘柄を例示している。- Energy Transfer(ダラスのパイプライン会社)
- MPLX(マラソン石油が組成したMLP)
「これらは今年20-30%ロスしたおかげで、利回り10-15%で、ディフェンシブな株価が付いている。」
引退したとは言え、個人資産150億ドル(約1.6兆円)の投資家であり、気の抜けた発言ではないだろう。