オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏が5月のMemoと同様、低格付けのクレジットへの投資に自信を見せている。
金利は次のサイクルでどこまで下がるのか、とBloombergで尋ねられ、マークス氏が答えた。
「1つ確信しているのは、私にはわからないということだ。
でも、金利は少し、でもひどく高くはないところまで上昇するかもしれない。
あるいはそうならないかもしれない。」
禅問答のような答の理由は、インフレが落ち着きつつある一方で、経済はマチマチの兆しを示しながらもまだ好調であるためだという。
ただ、超低金利の時代が終わり、近年より上向きに見るべきとの考えのようだ。
金利が趨勢的に上昇傾向となりそうな中で、マークス氏は比較的格付けの低いクレジットが魅力を増しているとアピールする。
現在(低格付け)クレジットから株式のようなリターンが得られそうな状況だ。
毎日売買される流動性のあるクレジットで10%を少し下回る水準、売買されないプライベート・クレジットでおそらく10%超だ。
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利回りが9%台なら、希望をもって投資でき、株式と比べても競争力があり、ほとんどの組織のニーズも十分クリアできる。
金余りの時代、リスクフリー金利が極めて低位に維持されていただけでなく、信用スプレッドにも縮小の圧力が加わり続けていた。
それが、米国をはじめとする各国の金融引き締めで巻き戻っている。
マークス氏は、リーマン危機後の14年間で、現在が最もクレジット投資有利の環境になっているという。
金融引き締めで低格付けクレジットが大きく下げたために、逆にこれからの投資の妙味が増したのだ。
同氏は、株式投資家もクレジットに目を向ける可能性が出てきたと期待を寄せる。
株式投資家がクレジット、しかも低格付けのクレジットに手を伸ばすには何が必要だろう。
そもそも株式とクレジットでは、金融商品としての性質が異なる。
マークス氏は冷静に株式とクレジットの差を分析する:
- 株式にはアップサイドのサプライズがあるが、クレジットにはない。
- 株式は長期投資(たとえば30年)なら、途中山谷あっても安定的なリターンが期待できる。
- クレジットは長くても7年ぐらいで、(デフォルトがない限り)その金利が取れる。
- クレジットは(株式と比べれば)ダウンサイドが限定的。
- クレジットは償還後に再投資しなければならず、その時の金利は予想が難しい。
当然ながら、それぞれよい面・悪い面がある。
マークス氏は、相当な自信をもって、クレジットを資産の一部に組み込むよう説いている。
問題は、あなたやあなたの組織がそのトレードオフについてどう感じるかだ。
クレジットのバランス型ポートフォリオにより長期で9-10%がかなり固く取れるとして、もしも『素晴らしい、いいね』と言うならポートフォリオの75%を割り当てればいい。
『株式のアップサイドへのエクスポージャーを確保したい』というなら、50、40%にすればよい。
ただし、クレジットにもダウンサイドはもちろん存在し、景気後退期にはその確率が増す。
マークス氏は運用者の甲乙によって目利きや回収率に差が出ると話している。
オークツリーに任せた方がいいよ、と言いたいのだろう。