ジェレミー・シーゲル教授が、トランプ大統領の「過渡期」発言に対し厳しく批判している。
大統領はFOX出演時「私たちが成し遂げようとしているのはとても大きなことであり、過渡期が存在する」と述べた。
これが市場では、政権が景気後退・市場下落を容認したと受け取られている。
これは経済学的に無意味だし、政治的にも無意味だ。
政権が言っているのは、米国に100千人の製造業での雇用を戻す一方で、20兆ドル分も米国株市場を下落させよう、ということ。
シーゲル教授がCNBCで、トランプ政権の関税政策の不合理を批判した。
不公正な通商条件を正常化しようとするのは当然のこととするものの、得るモノと失うモノのバランスも考えろというメッセージだ。
安い雇用を取り戻すために、経済を支える大きな富を失うことの不合理を指摘している。
米経済における資産効果の影響度の高さを感じさせる主張である。
シーゲル教授は、トランプ関税が票を獲得する上でも不利になると説いている。
「忘れてはいけないのは、米公衆のほぼ半数は、直接であれ間接であれ、確定拠出年金・退職口座・年金を通して株式を保有している。・・・
いくらか製造業が戻ってきて、どれだけの雇用が戻って来るの?
0.1%未満で、賃金が少し上がるだろうか。
どこに政治的合理性があるのか、私にはわからない。
たぶん誰かが説明してくれるだろう。」
これは対岸の火事ではあるまい。
日本でも民間の年金基金はもちろん、GPIFでもポートフォリオに株式を配分している。
GPIFの基本ポートフォリオの配分は今年度まで国内債券、外国債券、国内株式、外国株式に1/4ずつで、2025年度以降も継続すると報じられている。
つまり、株式投資をしているつもりのない日本国民もほぼすべてが株式にエクスポージャーを持っていることになる。
もちろん株価上昇のために政治を行うのはおかしな話だが、株価を犠牲にした政治を行うのも同様におかしな話なのではないか。