投資

アスワス・ダモダラン 【短信】「危険域」はマグニフィセントセブンじゃない:アスワス・ダモダラン

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、高値警戒感のあるマグニフィセントセブン(Mag7)について尋ねられ、もっと心配な状況を解説している。


これら7銘柄だけで過去1年半の間に8.8兆ドルも時価総額が増えた。
・・・世界第2位の規模の中国市場の時価総額は12.1兆ドルだ。
これら7銘柄の時価総額の増分はドイツ、フランス、スイスの市場規模を超えている。

ダモダラン教授がCNBCで、Mag7の「驚異的上昇」について語った。
(ちなみに先月末の東証時価総額は6.3兆ドル弱。)

世界市場拡大の偏在を見る限り、ここにリスクを感じるのは当然のことだろう。
しかし、ダモダラン教授は、株価の背景にある点にも注目すべきと付け加えている。

これらを高リスクのテック企業と片づける前に、私が同時に言いたいのは、これらが市場におけるATMという点だ。
・・・これら銘柄は多くの点で、利益やキャッシュフローを気にする投資家にとってバリュー株になりつつある。

Mag7のバリュエーションは高いものの、業績もそれなりにともなっているとの指摘だ。
(実際、かなり前からApple株をバリュー株と呼ぶ人も多い。)
では、これら銘柄にリスクはないのか。

ダモダラン教授は、これまでの議論が市場内の相対的な比較であったことを暗示している。
つまり、Mag7をはじめとするテック株が相対的に高バリュエーションであるのには、業績見通しへの楽観があるということ。
これだけでは、テック株やそれ以外の米国株が絶対的に割高であるかはわからない。

ダモダラン教授は、Mag7、テック株、米国株市場全体が「危険域」にある可能性を指摘する。
「市場が熱いか冷たいかの個人的指標」として株式リスクプレミアムを挙げ、7月初めの数字が4.11%と、リーマン危機の2008年9月以来の低さにあると指摘した。

株式リスクプレミアムとは、株式市場全体の期待リターンからリスクフリー金利(通常10年国債利回り)を差し引いた差額分のこと。
投資家は、リスクフリー資産でなく株式市場に投資する場合、この差額分を追加で要求していることから、リスクプレミアムと呼ばれる。
これが低いとは、投資家が株式リスクを取るのに小さなプレミアムしか要求していないということ。
言い換えれば、リスクに寛容になっているということであり、もしかしたら油断なのかもしれない。

米株価はリーマン危機前より上昇している。
(もちろん業績が拡大した面はあるにせよ)リスクプレミアムはリーマン危機直前と同じ水準にある。
ダモダラン教授は、この状態に警戒する。

(リスクプレミアム)4%というのは、過去見てきた数字からすると、私には少なくとも赤信号に思える。
リスクプレミアムが4%を切ると、磁石に引き寄せられるように4%に戻る。
・・・現在の市場は、解消のための調整を必要とする領域に到達している。

逆に言えば、現状の4.11%ならまだ強い引力を感じていないということだろう。
今後もリスクプレミアムの圧縮が進み、4%を割り込んでくれば、少なくともバリュエーションの面では跳ね返される確率が高いとの解釈になる。

CNBCキャスターは、市場がこれまで気にしてきたFRB利下げを考慮する必要はないかと尋ねている。
確かに少し前までは、利下げが市場を左右する主たるナラティブだった。
(今では業績を重視する人が増えている。)
ただし、利下げとは短期金利の話。
資産価格に影響を及ぼす金利は理論的には長期金利だ。

ダモダラン教授は、FF金利が引き下げられても、それによって長期金利は大きくは変わらない可能性に言及している。
以前から教授は、中央銀行が市場金利を自在に操作できるとする考えに否定的だ。
「中銀・政府は限界部分で金利をナッジすることはできるが、ファンダメンタルズには抗えない」としてきた。
つまり、利下げによるイールドカーブの重要部分への影響は「限界部分」、いわばノイズにすぎないとの考えだ。
教授はすでに市場が利下げへの注目を軽くしていると指摘する。

「市場は利下げが実現していないのに上昇しているように見える。
市場は異なるナラティブによってドライブされていると判断したようだ。
11月が近づくにつれ、利下げは問題でなくなり、関税・税制が問題になるだろう。
これらは選挙の結果で変わってくる。」


-投資
-,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 本サイトでは、オンライン書店などのアフィリエイト・リンクを含むページがあります。 その他利用規約をご覧ください。