【書評】金融政策のフロンティア: 国際的潮流と非伝統的政策

執筆:

元日本銀行金融研究所所長、翁邦雄 京都大学教授による金融政策のガイド・ブック。
決して面白い本ではないが、金融政策が市場を動かしている現在、実務家にとってもたいへん勉強になる。
(この書評記事は当初2013年に浜町SCIコラムに掲載されたものです。未掲載の書評のうち現在でも有用と思われるものを厳選し再掲しました。)


(amazon)

この本の良さは、理論の概説があって、必ず、その次に世界各国の事例が付されていること。
過去を評価し、将来を占うのに役立つだろう。

個人投資家にとっては、たった2か所を読むだけでも意味がある。
第3章の金利と第5章の為替だ。
ここでは、極めてコンパクトに理論的枠組みが正しく紹介されている。
日ごろ動物の直感でトレードしている投資家には一見の価値がある。

最後に著者のアベノミクスへの評価が語られる。
 
著者はアベノミクスを


この政策パッケージはインフレ目標の達成を前提に日本銀行のマネタイゼーションによる財政への支援を得てデフレ脱却を目指すもの

と解釈した上で

中央銀行が国債を買って準備預金を増やしても、そのこと自体は必ずしも広義のマネーサプライを増やすわけではなく、まして財・サービスの需要増加によって生じるインフレーションを招くわけでもない。
マネタイゼーションによりインフレーションがもたらされるのは、政府が財政支出を拡大し、有効需要を増加させること — あるいはそうした政策への期待 — による。

と、その直接的な効果に疑問を呈している。
さらに、副作用として財政のさらなる悪化を助長するものと警鐘を鳴らす。
その懸念は残念ながら史上最高となった来年度予算概算要求などに実現し始めている。

その懸念からの帰結として、リフレ派が黙して語ろうとしない出口戦略の重要性を説く:

現在の超低金利によってかろうじて支えられている財政が、日本銀行のファイナンスによりさらに肥大化したあとで金利の上昇に直面する。

これが財政、債券市場、金融システム、企業経営や家計に甚大な影響を及ぼすことは想像に難くない。


 - Exclusive, 国内経済, 政治, 書評