【書評】英EU離脱! 日本は円高に対処できるか

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デフレは家計を救うか?

ではなぜ交易条件改善の恩恵が貧乏人に回らないのだろう。
言い換えれば、なぜ輸入物価低下が消費者物価の低下に結びつかないのだろうか。
野口氏は

「物価に下方硬直性が見られるのは、マーケットに寡占的な要素があることの反映だ。
そうした競争阻害要因を取り除く経済政策が必要である。」


と述べ、交易条件の改善が物価低下に結びつきやすい実体経済の醸成を求めている。
貧乏人の名目賃金を引き上げ、さらに、インフレ以上に引き上げるのは至難の業だ。
だから、名目賃金はそのままに、デフレを享受することで実質賃金を引き上げようというメッセージなのだ。
浜田教授は《成長を前提とした解決策》を提示しているために、インフレが必須との結論を出した。
野口氏は思考の自由度を拡げ《マイナス成長を許容する中での解決策》を模索した結果、デフレを享受しろと結論づけているのだ。
野口氏は「人々の生活にとって重要なのは、名目値でなく、実質値である」と言い切っている。


ユートピアは描くものでなく築くもの

野口氏は、今本当に必要なのは規制緩和、成長戦略、新技術の活用であるという。
正論ではあるが、こうした結論を見るにつけ、エコノミスト・学者・官僚・評論家と呼ばれる人たちの限界を感じてしまう。
確かにやれていないことも多いのだろうが、政府や民間もそこそこ頑張ってきたのが現状なのだ。
正論を述べることは「ユートピアを描く」ことに似ている。

榊原英資 青山学院大学教授は、成長を前提とした議論に無理があるとの点で野口氏と似た意見だ。
(それが大蔵省・財務省的なものの考え方なのだろうか。)
異なるのは
『邪魔な規制をやめれば日本の経済は再び成長を始める』というのは、幻想にすぎません
と、より一層冷めた現実主義を唱えているところだ。
榊原教授の考えが最もベースライン・シナリオとして適切なのかもしれないが、なんとも夢のない話だ。

優秀な人たちがエコノミスト・学者・官僚・評論家などにならず、泥臭い商売の道を目指すような世の中になるよう祈りたい。


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