【書評】米中戦争前夜(グレアム・アリソン 著)

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『米中戦争前夜』はハーバード大学ケネディ行政大学院の初代院長を務めたグレアム・アディソン教授による米中対立の解説と解決法の本。
レイ・ダリオ氏ブラックロックが推奨していた注目の図書だ。(浜町SCI)


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この本は「トゥキディデスの罠」という言葉を再び有名にしたことでも知られる。
この言葉の意味は《新興勢力が既存の覇者にとって代わろうとするとき、必ず戦争に結び付くこと》というもの。
現在の米中もこの罠に陥っており、両者の冷静な対処がなければ戦争に至りかねないとの問題意識から書かれた本である。

アディソン教授は過去500年トゥキディデスの罠に陥ったケースを16挙げている。
15世紀末のポルトガル対スペインから始まる16の対立関係だ。
この16のうち、戦争を回避できたのはわずか4件に過ぎない。
逆に言えば、わずか1/4とはいえ回避の可能性も残されているのだ。


我々日本はと言えば、16のうち2回も登場している。
1つ目は19世紀末から20世紀初頭の中露との対立であり、2つ目は20世紀半ばの米国との対立だ。
いうまでもなく、いずれも戦争に突入している。

投資家は政治家でも外交官でも官僚でもない。
投資家が米中関係に対してやれることは皆無だろう。
それなのに、多くの投資家が本書を推薦しているのはなぜだろう。
それは、多くの投資家がこの種の地政学的リスクに対して必ずしも得意ではないということだろう。
こうしたリスクをどういう物差しで量ればよいか。
リスクに対して投資家はどう備えるべきなのか。
本書がそのヒントを与えてくれるとの期待感があるのだとおもう。

本書ではぜひ読んでおくべきところが2つある。
1つはリスクが深化する過程(米中戦争の引き金)であり、もう1つはリスクが低減する可能性(戦争を回避するヒント)である。
戦争に至るシナリオは5つ挙がっており、日本も重要な当事者として語られている。
戦争を回避するためのヒントも12挙がっているのだが、生々しいまでの戦争シナリオに比べると、必ずしも安心させてくれるほどのものにはなっていない。

日々の米中摩擦のニュースを見ていても、投資家にとってはその重大性を評価するのは難しい。
この本は、その感覚を養うのに役立ってくれるものなのではないか。


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