【書評】日本財政が破綻するとき – 国際金融市場とソブリンリスク

著者の天達泰章氏は日本銀行を経て内閣府で経済財政白書の執筆を担当した日銀・政府内のエコノミスト。
そのエコノミストが物騒な著書を6月に上梓した。
(この書評記事は当初2013年に浜町SCIコラムに掲載されたものです。未掲載の書評のうち現在でも有用と思われるものを厳選し再掲しました。)


(amazon)

過去に日本財政は破綻寸前と言われながら、破綻しなかった。
見誤ったのは、金融市場の生態に目を向けてこなかったからと説く。
つまり、仮にファンダメンタルズが破綻を指していても、市場がそう認識しなければ実際の破綻には至らないという考えだ。
逆に市場が過剰反応をすれば、ファンダメンタルズがOKであっても破綻は起こりうる。

その上で

外国投資家に財政赤字の穴埋めを頼るとき、財政破綻が訪れる

と予言する。
そのタイミングは、 政府債務残高>民間金融資産残高 となるタイミング。
具体的には2025年頃と試算されている。

その上で、財政破綻に至るシナリオを示している:
1)国債利回りへの外国投資家の影響力が増大
2)過剰反応で国債利回りが急騰
 このきっかけとしては
 ・1998年の運用部ショックや2003年のVaRショック
 ・欧州金融危機など海外要因
 ・金融システム不安やそれによる財政悪化
 ・2002年の国債発行入札の未達
 のように例示されている
3)デフォルト、それを回避するための日銀引受・IMF支援


この3)は、どの選択肢を選ぼうと大きな痛みがともなう。
それを回避するために「増税と緊縮財政による堅実な財政再建努力も必要」と説く。
異次元緩和による利払い低減は時間延ばしにすぎないからだ。

政府債務残高が大きいため、名目金利の上昇により利払費が大きく増加し、財政収支は悪化することが予想され、財政破綻のタイミングを早めてしまう可能性もある

とリスク面も冷静に分析されている。

とてもスクエアに書かれた良書だと思う。
特に、象牙の塔に籠ることなく、市井の営みを重視する姿勢は高く評価したい。
筆者がリフレ派の学者に信頼を置けないのは、まさにこの裏返しの点にある。

現在の経済を読むための理論・仕組みについても丁寧に説明されている。
たとえば、「国債のマイナス金利」の発生する背景は
・国債以外に投資できない投資家がいるため
・為替スワップによりマイナス金利で調達できる投資家がいるため
と説明する。
いずれの現象も、実務家が日々の経験の中で行き当たるものだ。
しかし、どんな時にマイナス金利が発生するかと聞かれて、すぐにこの2つを挙げられる人はそう多くはないだろう。

著者の言では、日本の財政破綻まではまだ10年以上猶予があることになる。
この説明は相応の説得力がある。
しかし、筆者は上記のシナリオの1)と2)について、この順序である必要はないと考えている。
つまり、1)か2)か、いずれかが実現すれば、3)が起こりかねないと考えている。
過去、2)のみが実現しても3)は起こらなかった。
しかし、そのころから今まで、日本の財政はますます深刻なほど悪化しているように思える。


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