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アデア・ターナー 【書評】債務、さもなくば悪魔
2017年2月28日

債務が多すぎる

ターナー氏は銀行システムの理想と現実の差を指摘する。


「金融深化が有益な理由としては、もっぱら、企業や起業家に対して円滑に信用が供与される効果に絞って説明されている。
だが、現代の銀行システムでは、信用のほとんどは、新規設備投資の資金にはあてられない。
既に存在する資産、とりわけ既存の不動産の購入にあてられている。」

こうした幻滅がターナー氏を銀行に対して厳しくさせるのだ。
ターナー氏からすれば「不適切な債務が多すぎる」のだ。
これは、多くの国にとって耳の痛い話なのではないか。
金融緩和を行おうとする時、その言い訳の一つに挙げられるのが資産効果だ。
資産効果がないとはいわない(特に逆資産効果は大きいだろう)が、それにどれほど有用な本質的意味があるのだろうと反省させられる。

銀行は廃止せよ

ターナー氏は民間の信用創造の営みについて性悪説をとっているから、結論は明らかだ。
3つの大きな柱を掲げている:

  • 「銀行廃止」: 銀行の信用創造を禁止
  • 「債務汚染に対する課税」: 例えば不動産投資への優遇を廃止し、支払金利の税務上の損金算入を廃止するなど
  • 「株式契約の奨励」: デット・ファイナンスでなくエクイティ・ファイナンスを奨励

民間の信用創造が経済を成長させると考えてきた人にとっては、なかなか受け入れにくい提案だろう。

ヘリコプター・マネーの勧め

では、すでに膨張してしまった政府債務はどうするのか。
そこで登場するのが「現在の財政赤字のマネタリーファイナンス」ということになる。
政府債務のマネタイゼーション、あるいは後追いの(狭義の)ヘリコプター・マネーである。
ターナー氏は、過剰債務を抱えた政府についてこう書いている:

「政府と中央銀行が連携し、通貨を増発し、支出することで、名目需要の不足は常に克服できる。
マネタリーファイナンスという選択肢以外に、直面している債務過剰の苦境から脱出する方法はおそらくない。」

経済を悪化させることなくプライマリー・バランスを改善するというようなバラ色の財政再建は存在しないとターナー氏は考えている。
かと言って、経済を悪化させれば、それもまたプライマリー・バランスの悪化させてしまう。
名目の債務金額を減らすことができないなら、貨幣を発行することで凌ごうという話だ。
もちろん、それは強いインフレ要因になる。
ジンバブエになるかならないかは、きちんとコントロールするかどうかだとターナー氏は考える。
この点を懸念する人は多いが、ターナー氏はあくまで積極的実験科学者なのだ。

(次ページ: 日本国債が消滅する日)


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