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【書評】世界最強のエコノミストが教える お金を増やす一番知的なやり方

執筆:

『世界最強のエコノミストが教える お金を増やす一番知的なやり方』は経済学者ジョン・ケイ氏が書いた資産運用ガイド本。
ケイ氏はオックスフォード大学サイード・ビジネス・スクール初代ディレクターなどを歴任し、フィナンシャル・タイムズのコラムニストを20年間務めた。(浜町SCI)


とても「知的」である。
非常にオーソドックス、すなわちファンダメンタルズや投資理論を重んじる内容となっており、極めて好感が持てる。
投資理論を正しく書いており、それでいて読みにくくなっていない。
投資や資産運用のガイド本の中には偏った見方だったり不正確な書き方だったりするものが多い中、正確かつバランスのとれた良書だと思う。

(amazon)

1つの手柄は、業界に属しない立場から真実を書いていることだろう。
業界に属する人はしばしば業界・自社・自身の利益に反する可能性のある不都合な事実を覆い隠すことがある。
ケイ氏にはそうした動機はないから、思った通りのことを書ける。
結果、業界に騙されるなというメッセージが多くなる。


オーソドックスでありながら、すでに投資や資産運用をよく知っている人にも楽しめる内容だ。
主たるメッセージは理論通りであり、プロやセミプロにとっては退屈なものかもしれない。
しかし、主たるメッセージが退屈でも、従たるメッセージを楽しむことができる。
一例を挙げよう。

かつてのバリュー投資といえば、市場価格よりも安く有形資産を買うことだった。
今日のバリュー投資は、持続的な競争優位性を割安に買うことである。

「かつてのバリュー投資」とは、ベンジャミン・グレアムのバリュー投資のことだ。
「Buy low, sell high.」によってリターンを上げる投資手法。
何らかの原因でファンダメンタルズの示す価値より割安となっている銘柄に投資する。
その後、価格にファンダメンタルズが正しく反映されたところで投資回収する。

「今日のバリュー投資」とはウォーレン・バフェット氏やチャーリー・マンガー氏が確立したバリュー投資だ。
「Sell high.」をしなくてもリターンが上がるバリュー投資である。
バフェット、マンガー両氏がバークシャー・ハザウェイで行っている投資の一部は永遠に持ち続ける覚悟のある投資対象だ。
一たび正解の銘柄を見つけたら、刈り取りさえ必要のない夢の投資術なのだ。


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