バブル

【書評】バブル 1980-1989 日本迷走の原点

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日経証券部記者・編集委員などを歴任した永野健二氏が1980年代終わりのバブルの原因に迫った本。
昨年11月、日本がまだまだデフレを脱せない中、この本が書かれた背景は想像に難くない。


日経記者の方の書かれる本は2つの顔を持っていることが多い。
経済史に残るような太いテーマを綴る部分と、それにまつわる出来事を描写する部分。
後者はいわば経済事件のオムニバス映画のようなものであり、読者を決して飽きさせないノンフィクションのエンターテインメントだ。
だから、この本も読んで損はない。
確実に楽しめる本になっている。
しかし、それだけで終わってしまっては著者に失礼であろう。
永野氏が伝えようとした太いテーマを正しく受け止めるよう努力したい。


渋沢資本主義の機能不全

簡潔に太いテーマを言うなら、80年代のバブルとは永野氏が「渋沢資本主義」と呼ぶ経済システムが「耐用年数を過ぎて、機能しなくなった」ものということになる。
この比喩的な命題が具体的にはどのようなものであるかは原著を読めば明らかになる。
永野氏は、「バブル時代を知ることなしに現在の日本を理解することはできない」と断じている。
つまり、本書は現在を知るために書かれたのである。

80年代バブルの起点

バブル発生の一因は何か。
永野氏はエコノミストの中前忠氏の発言を引いている。

「日本のバブル経済の実質的な起点は、間違いなく86年にある。
それはプラザ合意以降の円高過程で、日本の政策当局が日本経済の競争力を過小評価したことにある」

助ける必要もないのに助けてしまった。
それがバブルを生んだのみならず、可能だったはずの構造改革を「ないがしろにした」のだという。
私たちは、リーマン危機と異次元緩和のいずれが日本企業の構造改革を強烈に推し進めたか思い出すべきだ。

(次ページ: バブルの後遺症を引きずらせたもの)

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