海外経済 政治

【休憩】とてもいやな2つの韻
2021年1月7日

雑談だが、何かとんでもなくいやな感じがこのところ強まっている。(浜町SCI)


1つは、バブルの兆候がどんどん揃ってきていることだ。
金融緩和、悪いニュースへの無反応、高バリュエーションの正当化、IPO・暗号資産の活況、新規投資家の大量参入などはその最たるものだ。
これらすべてに共通する点が
「This time is different.」(今回は違う)
のさまざまな現れである点だ。
市場は過去のようには回帰しない、そういう信仰が背景で芽生えたのだろう。

悪意があったわけではなかろうが、主因に慢性的な金融緩和依存があったのは否定できまい。
あるいは、金融緩和以前に、超長期の金利低下サイクルだと主張する人もいるかもしれない。

いずれにしても、物語は1980年前後のボルカー・ショックから始まった。
ボルカーはFRB議長に就任すると、猛威を奮っていたインフレを強力な金融引き締めにより退治した。
インフレと金融引き締めで金利は高位にあったが、ここから40年近く続く金利低下サイクルが始まった。

市場はバブルを忘れやすい


その後のバブルは

  • 1980年代終盤 株式バブル
  • 2000年 ドットコム・バブル
  • 2007年 住宅バブル
  • 2021年 現在

金利低下が始まった1980年代初めからほどなくしてバブルが発生したのはなんとなく理解できる。
それまで高金利だったのが、急低下したのだから。

ブラックマンデー等から10年余りで次のドットコム・バブルが起こったのもなんとなく理解できる。
米投資銀行で10年ほど成果を挙げれば、一生分をゆうに超えるお金が稼げる。
この10年余りのうちで、業界の多くが入れ替わっていてもおかしくない。
特に手足となって働く層では、前回のバブルの記憶のある人は意外と少なかったに違いない。
また、Y2K問題やIT革命といったシーズニングも促進剤になったのだろう。

ドットコム・バブルから住宅バブルの間は5-6年とかなり短い。
しかし、これもなんとなく理解できる。
住宅バブルは株式バブルではないからだ。
分野が変わることで、前回のバブルの記憶が強く働かなかったのかもしれない。

現在、仮に株式がバブルだとすると、ドットコム・バブルから20年余り経っている。
投資銀行業界では相当に人が入れ替わっている。
これは日本でも同じこと。
前回バブルに踊り、その後苦しんだ層は、すっかり年寄りとなり、市場に及ぼす圧は小さい。

若者からすれば新鮮な市場であり、年寄りからすると既視感のある市場なのだろう。
これが1つ目の韻。

政治・社会も韻を踏むのか

もう1つの韻はワシントンで起こっていることだ。

ブリッジウォーター・アソシエイツのレイ・ダリオ氏がポピュリズムについてのレポートを公表したのは2017年のことだった。
投資家がポピュリズムの研究をするところに当初は違和感を禁じ得なかった。
しかし、その後その研究は経済政策、投資へとつながっていく。
2017年の時点で、ダリオ氏は当時が1937年の前に似ているとさかんに発言していた。
これは第2次大戦前、金融緩和が伸び切り、リスク資産が上昇し、経済が回復し、停滞が始まる直前にあたった。
幸いこのコールがかなり早すぎたのは、読者もご存じの通りだ。

ここで重要なのは、政治・社会と経済・市場を並べて考えるダリオ氏の見方が有効かもしれない点だ。
マーク・トウェインの
「歴史は繰り返さないが、韻を踏む。」
という言葉は無視するには魅力的すぎる。
まったく根拠のないことだが、経済・市場面で1937年に似ているなら、政治・社会面でもそのあたりに似ていてもおかしくない。
こう考えるのも人情ではないか。

6日のワシントンでは、トランプ大統領の呼びかけに応じて集まったトランプ支持者が一部暴力的な行動に及んだ。
時代こそ違うが、筆者は1923年のミュンヘン・プッチを連想した。
あるいは、日本で大きな問題を起こしたカルトを思い起させた。

過激な支持者の認知は驚くほど歪んでいる。
彼らの議論では、ファクトも、プロセスも、結論さえも重要ではないようだ。
敵と味方が事前に決められており、味方に有利ならファクトもプロセスも結論も正しいとなる。
見方に不利か、敵に有利なら、ファクトもプロセスも結論も嘘・間違いとなる。
まるで筋の悪い新興宗教のようだ。

米社会(おおらく日本社会も)の分断は長く続くだろう。
なにしろ、ファクトやプロセスが関係のない信仰なのだから。
そして、ダリオ氏が言った1937年が完全な大外しでないのなら、その間に1939-45年のようなことに見舞われかねないのではないか。


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