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【グラフ】これがQEである根拠:ジェフリー・ガンドラック
2020年1月15日

債券王ことダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏が、米量的緩和と長期金利の間の奇妙な関係について紹介している。


「FRBがやっているのが量的緩和であるというのが債券市場の冷酷な評決であることを暗示することがある。」

ガンドラック氏が自社開催の座談会で、現在FRBが進めているバランスシート拡大についてコメントした。

FRBは3度にわたる量的緩和(QE)の後、テーパリングを行い、量的引き締め(QT)を行ってきた。
2018年までQTは「自動操縦」だとして淡々とバランスシート正常化を進めていたが、第4四半期に市場が急変。
長期金利上昇への懸念から株式が売られる展開となった。
FRBはQT停止を示唆し利下げを行い、2019年市場は持ち直した。
ところが9月17日レポ市場の金利が急騰し、FF金利が誘導目標を逸脱するという事態が発生。
FRBは流動性供給で混乱を沈静化したが、結果としてバランスシートは再拡大することとなった。
今回の流動性供給は短期債買入れ等により行われており、FRBはQE4ではないと強調している。
しかし、市場関係者には看板だけの話との見方が多い。

問題は、FRBがバランスシートの増減を始める度に長期金利が見せる反応である。

FRBバランスシート(青、左)と米長期金利(赤、右)
FRBバランスシート(青、左)と米長期金利(赤、右)

皮肉なことに、ほとんどの人の直観とは反対に、量的緩和が行われると、長期金利は上昇する傾向にある。
・・・そして、量的引き締めが行われると、奇妙にも低下する傾向にある。
みんなの直観は逆だと思う。

この奇妙な現象にはいくつか仮説がある。
1つ目は、単なる《Buy low, sell high.》である。
何らかの政策が実施される期待が高まり、市場が織り込んでいたところに、それが実現したという解釈だ。
噂が事実になった時、直観的な方向と真逆に動くことは、よくあることだ。
長期金利がしばらくすると反転することからも、ありえない話ではない。
ただし、この解釈では物足りないほど長期金利の動きは大きいようにも見える。

もう1つの解釈は、市場のリスク・オン/オフが入れ替わるというもの。
FRBのバランスシート拡大、つまり流動性供給が市場心理に作用しているというものだ。

  • B/S拡大 → リスク・オン → 長期債売り(長期金利上昇)
  • B/S縮小 → リスク・オフ → 長期債買い(長期金利低下)

こちらの方が、外形的な説明だけでなく、中身の説明までできているかもしれない。
いずれにせよ、あるいは他で理由であるとしても、そこそこ再現性のある経験則になっているとはいえそうだ。

ガンドラック氏がここから導いた結論はこうだ。

これはとても興味深い。
単純すぎるのだろうが一変数モデルを用いるなら、市場はこれ(現状のバランスシート拡大)をQEプログラムと受け取っているんだ。

この現象・解釈が示唆することは多いのかもしれない。
1つ目は、一たび量的緩和を大きく始めると抜け出すのが容易でないということ。
QE1、QE2終了後に再びQEに逆戻りした時《QEトラップ》として恐れられた現象がまた起こっているのだ。

もう1つは、FRBが金融緩和を行いたいのなら、奇妙なことに空論においてはQTをやるというのも一案になりかねないこと。
現在FRBが長期債を買いたくない理由の1つは、フラットなイールド・カーブにあるのだろう。
長期金利を下げればカーブが長短逆転を起こし、景気後退を印象付けかねない。
短期側が上がるのでなく長期側が下がることで起こった今回の逆転を心配すべきかは、いまだに意見が割れている。
もしも、どうしても逆転を避けるとするなら、奇妙なことに、FF金利を引き下げるのとともにQTを行うというのが効果的という話になってしまう。
この場合、FRBはQTによってネットで流動性を吸収するのに、それを上回る力で民間が流動性を供給する構図になる。
まったく奇妙な構図であり、市場の機能不全を心配させる。


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