投資

ウォール街 「老後破綻のリスク:ジェレミー・シーゲル」についての補遺

ジェレミー・シーゲル教授による老後破綻リスクのシミュレーションに対して多くの反響をいただいたので、少しだけ補足させていただく。


ご意見のほとんどは(記事でも触れたとおり)当初の投資額や毎年の取り崩し額が大きすぎて参考にならないというものだった。
無理もない。

シーゲル教授は投資家へのアドバイスのために計算したのであり、対象は投資家だ。
商売面も含めて、ある程度の資産額がなければ、投資の話にはならない。
(そもそもが社会保障の話ではない。)
資産をほとんど持たない投資家に運用の中身をレクチャーしても意味は薄い。
その場合は、先にしっかり働いて元手を稼ぐべきだろう。
老後資金が貯まって、その投資先の議論をするというなら、1百万円という設定はわからなくもない。
私たち庶民は、就業年齢にあるうちに、まず億り人となるべく、一生懸命働き、賢く運用しなければいけない。
シーゲル教授のシミュレーションは、それが終わった後の話なのだ。

さて、シーゲル教授が行ったシミュレーションの設定を見ると、もっぱら運用面に注目したものであることがわかる。
生活費等々を引いて・・・というような細かなものではない。
生活費等については、取り崩す4-5万ドルから払うことが想定されている。
つまり、入りは当初の1百万ドルで、出は年4-5万ドルだ。
毎年、残高に対して運用リターン/ロスが加減されることになる。
ならば、当初金額と取り崩し額を相似形で縮小すれば、結果の確率はおそらく変化しないとの推測が働く。
ここで、生々しい読み替えをしてみよう。

当初資金: 25万ドル(約2,700万円)

株式:債券 年1.25万ドル取り崩し 年1万ドル取り崩し
0:100 91.6% 71.8%
60:40 39.5 19.3
75:25 36.0 18.3
100:0 33.7 21.4

ある日本人Aさんは一生懸命勤め上げ、引退時に(世間で必要とされているよりも多い)2,700万円を手にしていた。
年金で最低限の生活はできる。
2,700万円を(過去の利回り実績が比較的よい)米国債と米国株で運用することにした。
毎年1-1.25万ドル(月10万円前後)を取り崩し、豊かな生活を得ようとした。

がぜん現実味が増したのではないか。
それにしても、なんとも切ない計算結果だ。
こんなにもささやかな生活設計なのに、豊かさを得るための月10万円前後の取り崩しが途中で破綻する確率が2-3割もあるというのだ。

結局、結論は元のシミュレーションですでに明らかだったのだ。
引退するまでにしっかり稼いできちんと殖やしておかなければダメということなのだ。




山田泰史山田 泰史 横浜銀行、クレディスイスファーストボストン、みずほ証券、投資ファンド、電機メーカーを経て浜町SCI調査部所属。東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修了 理学修士、ミシガン大学修士課程修了 MBA、公益社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。

-投資
-,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。