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「力の均衡」と「友好なき協力」:ローレンス・サマーズ

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が経済・外交政策について語り、経済学者を大きく超えた器の大きさを見せつけている。


私にはマイナス金利が有効かどうかわからない。
マイナス金利は相当に信頼感を揺るがしてしまうと思う。
金融セクターの一部にかなりの打撃を与えうる。

サマーズ氏がYahoo Financeのインタビューで、含みを持たせながらもマイナス金利政策に否定的な意見を述べた。
同政策が不可避ではないとし、今後は利下げ(マイナス金利)より財政政策に頼ることになるだろうという。

米国でのマイナス金利政策採用の是非が注目されている。
パウエル議長をはじめとするFRB高官が否定的なスタンスを示す一方、トランプ大統領は借金で焼け太った不動産屋らしく飽くなき利下げを求めている。
(唯一の例外は、大統領がまだ当選する前だ。
当時は、FRBの金融緩和に猛反対していた。)

市場がこの動向に注目するのにはいくつか理由がある。
しかし、煎じ詰めれば米資産の投資魅力を変化させるためだ。
これは、国際的なマネーフロー、したがって為替にも影響を及ぼす。

パンデミックだけが私たちの直面する課題ではない。・・・
経済を近代化し成長させるため多くの投資が必要だ。

サマーズ氏は、財政政策で対応すべき課題は多いと話す。
浄水の水質、国際空港、鉄道網、航空管制システム、高速道路、気候温暖化・・・。

「これらは社会に高いリターンをもたらす。
今こそこれを進めるべき時だ。」

従前からの持論どおり、投資効果の高いインフラ支出を実施すべきとの主張である。

サマーズ氏は、外交問題、とりわけトランプ政権が蒸し返そうとしている米中対立について尋ねられると、ヘンリー・キッシンジャー国務長官の時代を思い起こさせるような話をした。

「伝統的に私たちが求めてきたのは、例えば冷戦時ならば、相互確証破壊を通した相互確証抑止だ。
誰かが攻撃をしかければ、壊滅的攻撃が返ってくるので、均衡が保たれ、均衡が抑止を維持する。」

サマーズ氏は「力の均衡」という概念が引き続き重要であると認めている。
しかし、それは必ずしも優先順位が高いとは限らないようだ。

「しかし、より大きな問題は気候変動にかかわる問題、パンデミックにかかわる問題、金融不安定へのスパイラル回避にかかわる問題、人や難民の大量移動にかかわる問題、テロにかかわる問題だ。
これらの問題は1国で解決できる問題ではなく、一緒に対処しなければいけない。」

今の世界には、大国対大国の対立のほかにも多くの重要な課題が存在すると指摘したわけだ。
とかく人は主役たちだけで歴史を語りたがるが、世界にはもっとたくさんの役者がいる。
そこに存在する多くの問題にも目を向けないといけない。
そのためには主役たちの間の協力が必要だが、往々にして彼らは互いに対立したがる。

サマーズ氏は「友好なき協力」という概念を用い、現実的な対応を模索すべきと説く。

友人である必要はなく、互いに好ましく思う必要もない。
必要なのは、ともに同じ舟に乗っていることを理解することだ。
同じ方向に漕ぐ方法を見つけなければ、どちらも行きたい方向に行けないんだ。


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