「保険的利下げ」と落とし穴:モハメド・エラリアン

Allianz首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、7日発表の米雇用統計についてコメントした。
同氏は、市場で「保険的な利下げ」を望む声が強まっていると解説している。


明らかに弱かったが、惨事というほどではなかった。
・・・しかし、私の予想より明らかに悪かった。

エラリアン氏がBloombergで7日公表の米雇用統計についてコメントした。
5月の同統計は

  • 非農業部門就業者数増: 75千人(市場予想は180千人)
  • 平均時給: 前月比増0.2%(同0.3%)、前年同月比増3.1%(同3.2%)
  • 失業率: 3.6%(市場予想通り)

となった。
エラリアン氏は「弱い」と言いながらも、「惨事」とは考えなかった。
就業者数の伸びが単月で落ちたとは言え3か月移動平均はいまだ良好であり、インフレに影響する賃金上昇も悪くないためだ。

その一方で、市場の方は以前からどんどん利下げを織り込んでいる。
本日11時時点のCME FedWatchツールによれば、ほとんどの投資家が年末(12月11日)までの利下げを予想している。

  • 現状維持: 1.5%
  • 25 bp利下げ: 12.1%
  • 50 bp利下げ: 31.9%
  • 75 bp利下げ: 35.4%
  • 100 bp利下げ: 16.4%
  • 125 bp利下げ: 2.6%

エラリアン氏は、市場からもしもの景気後退リスクに備えた『保険的な利下げ』を支持する声が高まっていると解説する。


保険的利下げが望まれ、市場はそれをすでに織り込んだかのようだ。
市場はすでに先回りをしたのか。
エラリアン氏は、先回りが行き過ぎている可能性への注意を喚起する。
たとえ保険的利下げがあったとしても、大幅な利下げを予想する市場にとって期待外れにとどまる可能性があるからだ。
そうなれば、期待外れだった分市場は再び動揺するかもしれない。

エラリアン氏は、市場の要望に応えるような形でFRBが後追いの金融政策を実施することは望ましくないという。
しかし、この保険的な利下げについては先週やむをえないとの思いが強くなったのだという。
そのきっかけはトランプ大統領によるメキシコに対する関税の脅しだった。
今回の関税(その後に延期されている)はこれまでと2つの点で異なる重要な転機だったという:

  • いったん議会で決着したことを蒸し返したこと。
  • 関税による脅しを経済以外の理由で再開したこと。

これまで当然とされてきたしきたりは無視され、米大統領の心1つで関税が脅しに使えるようになったのだ。

エラリアン氏はこの結果を解説する。

これが諸外国や米産業へ、米国は(関税を)経済的な武器にしたとのメッセージを与えた。
たとえ脅しをひっこめたとしても、消費・投資に不確実性を残すことになった。
これが主因で、保険的利下げに対して私は2週間前より同情的になった。


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