PIMCO:ドルに短期的オーバーシュートの可能性

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PIMCOのJoachim Fels氏は、市場がインフレ上振れリスクを十分に織り込んでいないと警告している。
さらに、国境税の導入のタイミングによっては、短期的に米ドルがオーバーシュートする可能性があるのだという。

「インフレのリスクは非対称であり、下振れより上振れのサプライズの可能性の方がはるかに大きい。
この理由によりPIMCOは物価連動国債を選好している。
市場はインフレ上昇を十分織り込んでいない。」

フェルス氏はBloombergで、最新の経済統計の軟化を一時的なものと言い切った。
米経済にはインフレ上昇を示唆する要因がいくつもあるという。

  • すでに完全雇用に近い。
  • (少なくとも来年までには)財政政策が打たれる。
  • 保護主義的政策がとられれば輸入物価が上昇する。

財政政策が引き起こすディマンド・プル、保護主義がもたらすコスト・プッシュの要因がインフレを上昇させるとの見方だ。

フェルス氏は外国為替市場について『為替の冷戦』が現実のものになりつつあるといい、市場の目がトランプ政権の通商政策・国境調整に釘付けだという。
先行きの不透明感から、近いうちにドル相場がどちらかに大きく動く可能性は小さいというのがメイン・シナリオだ。

「(国境税導入なら)ドル高だが、国境税を完全にオフセットするほど動くとは考えにくい。
諸外国の中には為替レートが柔軟でない国もあり、ドルの変動は国境税を完全にオフセットしないだろう。
これは、海外の輸出者のマージンが縮小するか、国内のインフレを意味する。」

本来、自国通貨高は輸入物価の下落を通してデフレ方向の要因となりうる。
しかし、現実には自国通貨高が十分に進まないため、課税によるインフレ要因が勝ってしまうのだ。
この想定は、国際収支への影響にも及ぶ。
フェルス氏は、ドル高が国境税を完全にオフセットしないなら、貿易赤字・経常赤字は縮小すると予想している。
しかし、もう一つのリスク・シナリオの方が市場関係者の胸を打つかもしれない。
それは、ドルがオーバーシュートする可能性だ。

「もしも、国境調整税がアナウンスされて、時間をかけて実施される場合、(アナウンスから実施までの間)ドルが短期的にオーバーシュートする可能性がある。
これは、よくない話だ。」

市場がトランプ大統領の財政政策に熱狂する中、フェルス氏はそれが諸刃の剣だと語る。
財政政策はインフレだけでなく金利をも押し上げてしまうからだ。

「もしも財政政策が大規模なものになるなら、FRBは利上げを加速し、2018年にもバランスシートをいくらか縮小するだろう。」

フェルス氏はトランプ政権の過大な財政政策、FRBの過剰反応が中期的なリスクになりうるという。

「最初のリスクはインフレがオーバーシュートすることで、2018-19年の話。
次にFRBが対応を加速させて不況を招いてしまうことで、2019-20の話になる。」