ECB:国債は無リスクではない

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EUやECBが、銀行による国債保有に国際的なルールを設けるよう求めている。
国債保有のリスクをリスク管理に適切に反映させるべきとの考えだが、こうしたルールが実施されれば日欧の国債は売られかねないだけに先行きが注目される。

ECB銀行監督委員会のダニエル・ヌイ委員長が

「銀行に保有する国債に対して資本を積むよう求めることは大きな改革ではない。
大改革は銀行の国債保有を制限することだ。」

と語ったとReutersが短く伝えている。
EUやECBは、現在BIS規制上無リスクとされている国債保有について、リスクを認識すべきとの考えなのだ。
日米ほかも含めた国際的枠組みの中で、国債をリスクアセットの一つとして扱うべきと主張している。
現在、ヌイ氏は銀行の国債保有を直接的に制限するよう働きかけるつもりはないという。
「大改革」でなく小さな一歩を選んだわけだが、くやしさを滲ませたようにも読める。

実は今年3月のWSJ報道ではヌイ議長は「国債保有額の上限を規制上の自己資本の25%に定めるよう提案して」いた。
規制上の自己資本の1/4しか国債を保有できないなら、国債保有の大きい日欧の銀行は保有を大幅に減らす必要に迫られるだろう。
一方、今回のリスクアセットとして扱うという考えは、リスク・ウェイト次第でははるかに緩やかな変更だ。

EUやECBがこうした敵の多そうな改革を目指すのは欧州金融危機への反省だ。
欧州金融危機のようにソブリン・リスクが実現してしまうような状況では、金融機関の国債保有は政府と銀行の共倒れを助長する。
国債価格下落が銀行の財務を悪化させ、銀行の信用不安がソブリン・リスクを悪化させる。
EUやECBは、あらかじめ国債が無リスクでないと示し、適切なリスクへの対処を行うべきと考えているのだ。

仮にBIS規制が国債にリスクウェイトを付したなら何が起こるだろう。

  • 市中銀行は国債保有量を(計画的に)減らしていくだろう。
    これは国債価格下落要因、金利上昇要因だ。
     
  • 売られた、あるいは買われない国債は日銀が買い入れるしかない。
    これをマイナス金利で続ければ、日銀は破綻してしまう。
    上記の金利上昇を押し返すにも限度があるのだろう。
  • 売られる国債を拾う奇特な投資家は多くないだろう。
    結果、日銀保有の国債は固定化し、事実上のヘリコプター・マネーが実現してしまう。
     
  • 国債保有の割合の大きい地方金融機関の収益機会はますます狭まる。
    運用力のない金融機関は淘汰されていく。
    もっとも、こうした規制の前にマイナス金利がこうした変化を促してしまうだろう。

遠い将来の話であろうが、ゆっくりと近づいているようにも感じられる。
この到来を遅らせられるのは、皮肉にも欧州の経済・金融市場の窮状の継続かもしれない。