日本銀行

1%の金利上昇でマイナス23.8兆円

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日銀の雨宮正佳理事が10日の衆議院決算行政監視委員会で答弁に立った。
民進党の原口一博議員の質問に答えたものだが、やり取りが本質を外していたのが残念だ。

「2016年9月末時点における長期国債の保有状況を前提として、イールド・カーブが上方に1%パラレル・シフトした場合の時価総額の減少幅(含み)を計算すると、▲23.8兆円程度という計算になる。」

普通だったら大騒ぎするところだろうが、議場は平静そのものだった。
何しろ同時点で日銀は国債を400兆円弱も保有しているから、これぐらいの数字は当たり前なのだ。
一方で、日銀の資本金はわずか1億円(1兆円ではない)。
純資産に範囲を広げてもわずか2.9兆円(29兆円ではない)である。

純資産・引当金とケタが違う

さすがにこれでは国債買入れは維持できない。
そこで、日銀は引当金を積んでいる。
同時点で債券取引損失引当金2.9兆円の残高があり、自己資本と合算して5.8兆円となる。
ちなみに引当金積立はすでに増額をしており、その財源には国庫納付金の減額があてられた。
(その他、外国為替等取引損失引当金が1.5兆円ある。)
これでも▲23.8兆円という数字は埋まらない。

「日銀は国債の評価方法として償却原価法を採用しており、先に述べた(▲23.8兆円程度という)損益・損失が計上されることはない。」

▲23.8兆円は含み損にすぎないから、大丈夫という主張だ。
苦しみながら時価会計を進化させてきた民間から見て、この主張は通るだろうか。
日銀の方は、PBRが0.5倍の株を見ると時価の倍で買ってくれるのだろうか。

不良債権化する日本銀行券

金融庁が銀行の検査を行う際のルール・ブック『金融検査マニュアル』では、「破綻懸念先」の定義に関して次のようなくだりがある。

「具体的には、現状、事業を継続しているが、実質債務超過の状態に陥っており・・・」

これがオートマチックに適用されるわけではないが、実質債務超過の意味は大きい。
日銀も日銀考査をやっているから、似たような考え方のフレームを持っているはずだ。
債務者区分とは、正常先、要注意先、破綻懸念先、・・・と続く。
要注意先以下が不良債権だから、日銀は+1%のイールド・カーブのパラレル・シフトで不良債権の疑いをもたれうるということだ。

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