麻生副総理が発信した40年債のシグナリング

日本銀行券

麻生副総理兼財務相と黒田日銀総裁が昨日会談した。
麻生副総理は40年債の増発検討を公表したが、これの意味するところは何だろう。

政府から財政政策、日銀から金融政策が出そろったところで、政府・日銀が会談した。
今の世間の感受性から言えば、《いよいよヘリコプター・マネーか?》といったところだろう。
実際、日経

中央銀行が政府に返済不要の資金を供給するヘリコプターマネー政策を市場参加者が連想すれば円安・株高が進みやすいとの見方もある。

と書いている。
書き方からして狭義のヘリコプター・マネーを指しているようだが、この話には無理がある。

  • そもそも40年債の増発規模は、全体からみれば数千億円と小さい。
  • 日銀が40年債を引き受けたからといって、それが「返済不要」となるわけではない。
    確かに償還までの期間は伸びるが、とにかく買入れ資金は買入れ時の利回りで戻ってくる。
  • 噂されていた50年債の発行検討については麻生副総理が否定している。
    さらに償還期限を延ばすことで、性格を永久債に近づける意図もないようだ。

この40年債が将来、広義から狭義へ変貌する可能性はもちろんある。
しかし、今の時点ですぐさま狭義のヘリコプター・マネーを連想するべきものではないだろう。
そもそも、本当に日銀保有の国債を返済不要にしたければ、とっとと無利子永久債と交換すればいいだけのことなのだ。

狭義のヘリコプター・マネーを排除するなら、40年債の意図は何だろう。
ここはシンプルに考えた方がいい。
大きく2つ考えられよう。

  • 日銀の保有する国債を長期化することで、量的緩和の継続期間を長くしたい。
    残存40年の40年債を買い入れ保有すれば、その分のベース・マネーは40年間供給されたままになる。
  • 借り手の政府が長期安定的で安い資金調達に動いた。
    そして、その消化がスムーズに進むよう、日銀の買いオペを通した支援を期待した。

借り手が《長期安定的で安い資金調達》を求めるのはどんな時だろう。
言うまでもなく、金利に先高観が見込まれる場合だ。
財務省は、金利(特に長いもの)が底に近いと見ているのではないか。

次に気になってくるのは、日銀が予定する9月の「総括的な検証」との関連性だ。
普通、何かを「総括する」と言えば、一区切りつけるとの印象を受ける。
異次元緩和に一区切りつけるのか。
Reutersによれば、黒田総裁は緩和縮小を否定している。

「そもそも総括的な検証自体が、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現する観点から何が必要かを明らかにするため。
そのようなことにはならない。」

仮に長めの金利が底に近く、それでも緩和縮小はしないというなら、やはりイールドカーブをスティープ化するような選択肢が検討されることになるのではないか。