門間一夫氏:デフレが景気を悪化させたのではない

日本銀行

日銀で調査局長などを歴任した門間一夫氏が、9月の日銀による「総括的な検証」についてコメントした。
日銀は、物価安定の意味や金融政策の考え方について根本的に再考すべきと注文した。

中立金利の低下

門間氏が日本記者クラブで行った講演をReutersが伝えている。
この中で門間氏は、中立金利の低下が現在の中央銀行の重要課題になっているとし、日本においても

「中立金利がほぼゼロの状況にゼロ金利状態を続けたため、ほとんど効果がなかった可能性がある」

と語っている。

政策金利をなぜ引き下げるのか。
金融政策の効果が足りないから、との考え方ももちろんある。
しかし、それは相対的な話にすぎない。
政策金利には絶対的な議論も存在する。

現在、日銀は長期金利を1%程度に誘導すると表明している。
仮に、長期の中立金利が長期金利以上であれば景気刺激的になる。
しかし、逆に中立金利が長期金利未満になれば景気抑制的になる。
仮に中立金利が低下し、長期ベースで0%以下に下がってしまうと、景気刺激的な長期金利の誘導目標はそれより低い水準になる。

こうしたロジックは、FRBの利上げに反対する立場の経済学者(ペン・バーナンキ氏やローレンス・サマーズ氏ら)が展開している。
理論上正しい話なのだが、難しい点もいくつかある。
その一つは、中立金利は精度をもって測定されるものではなく、あくまで推定されるものにすぎない点だ。
緩和派にとっても引き締め派にとっても現実の議論のマージンは大きいのだ。

現実的な道、非現実な選択肢

門間氏は、米国などで議論されている「中立金利の低い低成長環境で取るべき政策」を4つ紹介している。

1)地道な構造改革
2)財政積極活用
3)物価目標の3─4%への引き上げ
4)マイナス金利の効果を出すための現金撤廃

前2つは一定のコンセンサスがとりやすい話だろう。
一方、後2つはどうだろう。

物価目標の3-4%への引き上げ
物価目標を引き上げるとの議論は、反対も大きいだろう。
特に日本の場合、2%の目標さえ実現が困難と考えられており、《市場の期待に働きかける》ことでの効果は発揮しにくい。
目標を引き上げれば、この効果はさらに減退し、道は厳しくなる。
《期待》に期待できないとなれば、実際に緩和を強化するしかないが、限界説や副作用への懸念が高まる中で、実現は見通しにくい。

マイナス金利の効果を出すための現金撤廃
日銀は現在、マネタリー・ベースの一部(超過準備の一部)にマイナス金利を課している。
この効果を大きくするには、マイナス金利を課す範囲を増やせばいい。
一つは現金通貨である。
タンス預金はマイナス金利逃れにつながることから、タンス預金を退治すればいい。
現金を撤廃し、電子マネーに移行すれば、これが実現する。
電子マネーなら、現金通貨であってもマイナス金利を課すことができる。
こうした不思議の国の議論が欧米で好まれているのは事実だ。

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