野口悠紀雄氏:日銀の量的緩和が空回りしたワケ

野口悠紀雄

早稲田大学ファイナンス総合研究所・顧問 野口悠紀雄氏が、異次元緩和が結果的に目標を達成できなかった原因について解説している。
野口氏によれば、日銀は資産買入れの相手方を誤ったのだという。

日銀は方法を間違えた

野口氏は週刊ダイヤモンドへの寄稿で、BOEが2014年に公表した「Money creation in the modern economy」と題する論文を解説している。
ここに、異次元緩和失敗の原因を解き明かすカギがあるのだという。

「金利が実質的な下限にあるような例外的な状況で、経済における信用創造と支出はいまだ中央銀行の金融政策の目標を達成するには低すぎる水準にある。
可能な対処法の一つは、一連の資産買入れまたは『量的緩和』だ。
量的緩和は、資産を直接、主に銀行以外の金融機関から買い入れることで信用創造を促進できる。」

この記述の中ので重要なのは「銀行以外の金融機関から」という部分だ。
日本の量的緩和は主に銀行から国債を買い入れるというものだった。
日銀が銀行から何かを買い入れると、銀行は代金を受け取り、その分その銀行の日銀当座預金が増える。
ところが、これは日銀と銀行の取引であって、実体経済とは関係のない話だ。
だから効果を発揮しない。
野口氏は、日本の量的緩和が「空回りになったのは当然だ。つまり方法を間違えたので、効果がなかったのだ」と指摘している。

「マネタリー・ベースは重要な要素ではない」

では、効果を発揮するにはどうすればよかったのか。
銀行が受け取った資金を貸出を増やせばよかったのだ。
そうすれば、量的緩和が貸出を通して実体経済に波及したはずだったが、それが十分でなかった。
しかし、銀行も企業努力を怠っていたわけではない。
実体経済の側に資金需要がなかったのであり、だからこそ「金利が実質的な下限」にまで下がったのだ。

そこでBOEは考えた。
銀行ではない主体(年金や保険など)から資産を買い入れればいいと。
このケースで年金・保険に起こる現象をBOE論文は次のように説明する。

「量的緩和はまず(売却した資産の代金により)そうした会社の銀行預金を増やす。
そうした会社は、資産ポートフォリオのリバランスのため、より高利回りの資産を購入し、資産価格押し上げ、経済における支出を刺激すると期待される。

量的緩和の副作用として、中央銀行の準備預金が増加する。
しかし、それは伝達経路の中でさほど重要な要素ではない。」

(次ページ: 正しい方法なら実行できたのか?)