藤巻健史議員:合理的判断に逆行する日銀

藤巻健史

かつてJP Morganで伝説のディーラーと呼ばれた藤巻健史参院議員が、8月初めの財務相・日銀総裁会談について書いている。
合理的判断に逆行し続ける日銀に対し、厳しい批判を述べている。

麻生副総理兼財務相と黒田日銀総裁の会談は8月2日に行われた。
その後、麻生副総理は40年債の増発を発表したが、藤巻議員はこれについて週刊朝日に書いている。

「超低金利を生かすねらいとのことで、理にかなった判断だと思う。
・・・
『焼け石に水』の感もなくはないが、財政再建の一助になる。」

といったん評価している。
空前の超低金利のうちに、フィックスで長期資金を調達しようとしているのだ。
藤巻議員は同時に、読者に対して、長期固定の住宅ローンを検討すべきと推奨している。
藤巻議員もまた、この超長期国債増発を財務省の金利上昇シグナルと受け取ったようだ。

ところが、話はそう単純には終わらない。
藤巻議員は、増発された超長期国債を日銀が買い入れてしまうであろうことを懸念している。
これを説明するために、政府と日銀を連結ベースで考える考え方(最近はやりの《統合政府》の考え方)を説明する。
超長期での調達を政府が増やしても、同じ統合政府の一部である日銀が買い入れてしまえば、メリットは失われてしまう。

「そうだとすると、超低金利を生かす狙いとの解説に疑問が生じる。
・・・
日銀が政府から(市場を通して)国債を買い取ると、今回の40年債購入に限らず、政府の合理的判断を無駄にする。」

日銀が増発分を買い入れるとすれば、何が起こるのか。

  • 政府は、超低金利で長期安定的な資金調達が可能になる。
  • 日銀は、超低金利で固定利回りの資産を抱え、大きな金利変動リスクを負う。

つまり、政府は金利変動リスクを避けられるものの、その分のリスクは日銀が引き受けることになるのである。
そのリスクは、おそらく将来のどこかで日銀の財務にマイナスのインパクトを与える可能性がある。
仮にそうなってしまえば、それは日銀への貸し手である市中銀行や日銀券保有者へ転嫁される。
つまり、通貨 円の価値が下落するのである。

藤巻議員は、長期債・超長期債を買い入れ始めた異次元緩和を強く批判する。

「『見識』の最後の砦だと思われていた日銀は量的緩和の出口を見いだせないうえ、合理的判断に逆行する行動を続けている。」

日銀が「合理的判断」に逆行しているか否かは、彼らの目的による。
日銀の目的が日本の経済・社会に役立つためと定義するなら、藤巻議員の言うことには相当に説得力がある。
一方、日銀の目的が私利私欲・立身出世・自己顕示欲・自身の政治信条の実現などにあるとすれば、日銀の行動はまったく「合理的判断」なのである。

「合理的判断」はともかく、「見識」の部分については、昔を懐かしむバンカーは多いのではないか。
財務省の役人とは違って、政治的なタクティクスを極力排するのが日銀のイメージだった。
あの理詰めで働くジェントル・パーソンらはどこへ行ってしまったのだろう。