白井さゆり氏:長期緩和の副作用がコンセンサスに

白井さゆり

2011年から今年3月まで日銀審議委員を務めた白井さゆり慶應義塾大学教授が、海外金融当局関係者らの声を紹介している。
長期におよぶ非伝統的金融政策の副作用増大が国際的なコンセンサスになりつつあるといい、米経済回復が各国金融政策へのプレッシャーを減らすことを期待した。

金融緩和を長く続けるために起こる副作用

白井教授は民放番組で、シカゴで多くの各国中央銀行高官らと意見交換をした時の話を披露した。
全員が、主要中央銀行の非伝統的金融政策(マイナス金利、資産買入れ、超低金利の長期継続)はほとんど効果がないと考えていたのが印象的だったという。
米金融政策についても、リーマン危機後は効果があったものの、長く続けることで副作用が目立つようになったとの声が多かったのだそうだ。
そこで挙がった副作用は大きく3つだった:

  • 過剰なリスク・テイク
    バブル発生により再び金融危機を招きかねない。
  • 構造変化・潜在成長率向上の阻害
    中央銀行の市場介入が金融市場の機能を低下させ、信用配分を歪めることで、生産性向上を阻害しかねない。
  • 中央銀行の独立性を揺るがす
    政治が金融政策頼みになり、構造改革・財政政策がおろそかになる。
    金融政策がエスカレートし、矛先が中央銀行に向かう(米欧がその例)。

長い金融緩和は格差拡大も

また、白井教授は、特に米国で、金融緩和が格差を拡大したとの考えが強いと指摘した。
金融緩和が資産価格を押し上げたためという。

  • 株・債券: 富裕層が多く保有し恩恵を受けた。
  • 不動産: 低所得者の住宅取得による資産形成が難しくなってきている。
  • 貯蓄: 低所得者の主たる金融資産だが、実質金利がマイナス。

金融規制がリスク・テイクを阻害

さらに白井教授は、金融緩和と金融規制の組み合わせが格差を拡大したとの見方も紹介した。
リーマン危機後、危機の再発防止のためにドッド・フランク法など金融規制が強化された。
結果、銀行は、経済改善や中・低所得者底上げに寄与するはずの民間、特に低所得者・自営業者向けローンに積極的になれずにいる。
これが格差拡大を助長したとの考えだ。

白井教授は、米大手銀のバランスシートで安全資産(国債・連銀への預金・エージェンシーMBS)の比率が高まっている点を指摘する。
国債・MBSを別とすれば、超過準備を増加させたQEが安全資産の増加に手を貸したのは明らかだ。

(次ページ: 110円はギリギリ)