浜田宏一:為替介入か外国証券買入れか

浜田宏一

内閣官房参与 浜田宏一 イェール大学教授が、「日本vs為替投機筋」と題する論文をProject Syndicateに寄せている。
財務省は為替介入を実施し、投機筋を屈服させてこそ、日本経済を立て直すことができると主張した。

財務省が嘘つき少年になったワケ

浜田教授は、日本が投機筋から足元を見られてしまったと嘆く。
円高が進む中、為替介入を匂わせながら実行しない財務省は、嘘つき少年と同じく信頼を失ったという。
財務省が介入しないと読めば、円高一本の賭けとなり、損はしないから、どんどん円高が進んでしまったという。

日本が介入に踏み切らない理由は2つあろう。
まず、そもそも円高とは言えないため。
購買力平価や実質実効為替レートから見て、現状が円高とは言えないとの声は少なくない。

もう一つは、浜田教授が主張している米国からの圧力だ。

「ある米国人学者は、私が(為替介入という)その言葉に言及しただけで、まるでいかがわしいものに対するように怒った。
米国の官僚の方は、もしも日本が為替操作国とされれば、米議会はTPPを批准しないと強調した。」

売られたケンカ

なるほど、浜田教授の怒りは理解できる。
元を正せば、ケンカを売ってきたのは米国だ。
リーマン危機後に米国がQEをやったことから始まった円高ドル安だった。
瀕死の重傷の友人を慮って、ドル安を許容したのだが、この時、文句を言うことはしないまでも、もっと恩を売っておくべきだったのだろう。

米国が立ち直ると、今度は需要不足と円高に苦しむ日本が量的緩和による通貨安の恩恵を受ける番となった。
米国は当初3年ほどは寛容だったが、最近は日本や中国・ドイツなどを監視リストに挙げるようになった。
金融政策を正常化したい中、海外経済を優先するわけにもいかない。
また、貿易相手国の通貨安を許せば、それこそトランプ候補を利することになる。

為替介入すべき

さまざまな状況を考えれば、やはり現水準で為替介入を行うのは難しい。
それでも、浜田教授は、手遅れになる前に、財務省が実行すべきと主張する。

「財務省がなすべきは、勇気をもって為替市場において円高を阻止することだ。
投機筋が手痛い教訓を学べば、日本経済が立ち直ることができる。
日本はTPP失敗のスケープゴートにされてしまうかもしれないが、現在の米国の政治的状況を考えれば、いずれにせよTPPが発効することはありそうにない。
代替手段は、日銀が外国証券を買入れることだ。」

なんという素直な表明だろう。
空気を読まない純粋無垢な浜田教授の真骨頂だ。

注目すべきは3点:

  • 国際関係を悪化させるのも辞さず、為替介入すべしという強い意志。
    それだけ見れば、まるでトランプ氏のようだ。
  • TPPが発効しないと見ていること。
    アベノミクスの看板だった政策は風前の灯のようだ。
  • 日銀による外債買入れ案が息を吹き返しつつあること。
    これは、為替介入以上に米国を刺激するだろう。

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