河野龍太郎氏:新自由主義はどこで間違ったのか

河野龍太郎

BNPパリバの河野龍太郎氏がReutersに寄せたコラムで、世界で吹き荒れる反グローバリゼーションの高まりに危機感を露わにしている。
各国の新自由主義的政策に欠けていた点を洗い出し、格差問題への対応策を提言している。(浜町SCI)

新自由主義は再配分の方向性を誤った

河野氏は、Brexitやドナルド・トランプ米大統領選候補の躍進など、反グローバリゼーションの高まりが日本に伝染することを危ぶむ。
日本の政治が自由貿易・規制緩和・移民政策などの成長戦略を停止あるいは逆転させてしまわないとも限らない。
こうした成長戦略の背景には、1980年前後に始まったレーガン・サッチャー革命が唱えた新自由主義があった。
この新自由主義が揺らいでいる。
河野氏は、新自由主義のどこに問題があったのか自問する。

「経済学は、まず自由貿易や規制緩和の推進で、経済全体のパイを可能な限り高めた上で、その後、インセンティブを大きく歪めない範囲で所得再分配を進めよと教えてきた。
しかし、この35年余り、各国で続けられてきたのは、所得再分配についても、より稼ぐ人のインセンティブを高めることで、全体のパイの拡大を狙った政策である。」

つまり、再配分見直しの方向性に誤りがあったとの指摘だ。

格差への処方箋

国際化や技術革新は、ただでさえ格差を拡大させかねない。
それなのに、所得再分配の見直しが格差を助長してしまった可能性があるというのだ。
河野氏は、格差問題について大きく2点提言をしている。

  • 社会保障改革: 高齢者へのサポートを見直し、全体としては高齢者はサポートする側に回るべき。
  • 人的資本の底上げ: 国際化や技術革新に対応でき恩恵を受けられる人材育成。

いずれも極めて重要なテーマだ。
そして、(特に後者は)長い時間軸での政策になるだろう。

教育が重要なわけ

後者について言えば、お金の話でない分、とても重要な施策である。
仮にTPPが発効するなら、それは南北格差を抱えた自由貿易協定となる。
自由貿易とは、自由な人の行き来と一体のものだ。
新興国は輸入を自由化する分、出稼ぎも自由化しろと言うはずだ。

日本の労働者の能力は高い。
語学が弱いなどと言われるが、逆に強いところもある。
しかし、話がコスト・パフォーマンスとなると不利になる。
まだまだ日本人の賃金水準は新興国と比べて高い場合が多いからだ。

自由貿易は日本の取り分を増やすだろう。
しかし、日本人がのんびり構えていれば、日本人は職にあぶれ、優秀な出稼ぎ外国人がしっかり稼ぐということにもなりかねない。
とりわけ深刻なのは、そうした変化がホワイト・カラー層で加速することだ。

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