河野龍太郎氏:マネタリー・ベース拡大には意味がない

河野龍太郎

BNPパリバの河野龍太郎氏が、9月に予定されている日銀の「総括的な検証」の行方について予想したQ&A集の後編
理詰めの分析・予想が為されており個々に紹介はしないが、一つ基本の基本について見直しておきたい。

貨幣数量説と流動性の罠

2013年以来、日銀は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率2%と定めている。
それを実現するための手段である金融市場調節の操作目標も、政策金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)からマネタリー・ベースに変更された。
現在では、マネタリー・ベースが年間約80兆円増となるよう金融市場調節が行われている。
この手段について、河野氏は理論的な解説を加える。
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「中央銀行の負債であるマネタリーベースの拡大にはそもそも理論的な意味がない。
金利がゼロになると、経済・物価とマネタリーベースとの間の関係が遮断され、『マネーを増やせば物価が上昇する』という貨幣数量説が成り立たなくなるためだ。」

これは、ゼロ金利制約・流動性の罠として経済学で古くから知られた考えであって、目新しいものではない。
この古くからの知恵を認めるなら、日銀の量的緩和策には理論的な妥当性がないことになる。
(むろん、期待に働きかけるといった副次的な効果は考えられるが、結果を見れば、それも不十分であったことになる。)

マネタリー・ベース目標撤回の可能性

河野氏は諸外国の事情を紹介する。

「現実に、量的緩和を行っている国で、マネタリーベース目標を掲げるのは日本だけである。
他の国では、国債や社債など資産の購入額に目標が設けられている。」

こうした事情から、「9月会合では、マネタリーベース・ターゲットについては、撤回ないし事実上棚上げされる可能性がある」のだという。
マネタリー・ベース目標は年間の買入れペースと連動するから、国債市場には一定の影響があるだろう。
ただし、恐れるには値しない。
大きく動けば、マネタリー・ベース目標にかかわらず、日銀は買入れを発動するだろうからだ。

物価とゼロ金利制約

ここでは、流動性の罠やゼロ金利制約について検証しておきたい。
下グラフは、金利、マネタリー・ベース、CPIを並べたもの。
金利(5年もの)、マネタリー・ベース(前年比)とCPI(総合、前年比)
この期間の間に、オイル・ショック、バブル、失われた10年、量的緩和、リーマン危機、異次元緩和などが起こった。
では、マネタリー・ベースとCPI(ともに前年比)の関係はどうだったのだろうか。
マネタリー・ベースとCPI
ここから傾向を読み取るのは難しい。
(ヒステリシスを考慮すると、より改善すると思われる。)
ここから読み取るべきは、複数の傾向線が混在しているという点だろう。
そこで、複数期間に区切ってみよう。

(次ページ: マネタリー・ベースではインフレは実現しない)