河野龍太郎氏:ソロス・チャートはサンスポット均衡

河野龍太郎

BNPパリバの河野龍太郎氏が、9月の日銀による「総括的な検証」の中身を予想している。
河野氏はジャクソン・ホール直後、日銀の金融政策が「量から金利へ」シフトするとコメントしていた。

河野氏はReutersへの寄稿の中で、あらためて「量から金利へ」の予想を詳述している。
セオリーからポリティクスまで広く深く分析されている。
掘り下げ始めるときりがなさそうなので、ここでは2点紹介する。

ソロス・チャートという錯覚

この点は元日銀理事の早川氏も指摘していた。
それほど、政府も日銀も企業も市場も為替を気にしているということだろう。
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「為替市場参加者にソロスチャートを信じる人が多く、ファンダメンタルズとは無関係な確信(=マネタリーベースの拡大が円安につながる)によってサンスポット的均衡が生まれたのかもしれない。
あるいは皆がマネタリーベースの拡大が円安につながると信じているから自分もそれに乗っかるというケインズの美人投票的な自己実現的予想が形成されたのかもしれない。
いずれにせよ、量的・質的緩和によって、円安バブルを醸成したことでインフレ期待が上昇したのだと筆者は考えている。」

異次元緩和の伝達メカニズムの中で、円安を経るチャネルの役割は絶大だった。
しかし、ゼロ金利ではマネタリー・ベース拡大と物価上昇の関係は遮断される
それなのに、市場は錯覚し、(大きなマグネチュードではないが)バブルを生んでいたのである。
そのバブルは、1ドル120円から100円への円高進行で調整を済ませたところだ。

ドル円のソロス・チャート

河野氏は、「総括的な検証」の内容をこう読む:

「筆者が推察する通り「量」から「金利」重視へのレジームへの移行を進めたいと日銀が考えているのであれば、その方向性を総括検証で示唆した上で、9月は政策変更を見送り、円高が大幅に進む場合、10月に国債買い入れのレンジ化に踏み切ると同時に、マイナス金利を深掘りするといった対応も考えられる。」

噛み砕いて言えば、

  • 「量から金利」: マネタリー・ベース目標を撤廃し、緩和の手段の重心をマイナス金利に移す。
  • 「9月は政策変更を見送る」: 9月は検証結果の公表にとどめ、しばらく為替への影響を見る。
  • 「国債買い入れのレンジ化」: 円高が進行するようなら、国債買入れを「レンジ化」した上で温存、市場の円高期待を抑える。
    円高が進まないようなら、マネタリー・ベース目標は撤廃し、金利ターゲットへ移行する

一方、河野氏はこうならない可能性にも言及している。
ジャクソン・ホールでの黒田総裁の講演から

「黒田総裁の評価から導き出される1つの結論は、引き続き『量』を追求することでインフレ期待の上昇に努める一方、マイナス金利政策も継続して長期金利を低位に安定させることで、実質金利の低下を図り、ひいてはインフレ率の上昇を目指すというものだろう。」

黒田総裁は依然、自身の政策に肯定的だから、検証の内容が路線変更ではなく手段の探索になるという可能性だ。
こちらの方が、日本の組織でよく見かける風景のように感じられるのは筆者だけだろうか。