早川英男:将来の財政コストを隠す日銀

早川英男

元日銀理事の早川英男氏が、日銀はマネタリー・ベース目標を撤廃すべきと語っている。
また、日銀はオーバー・パーの国債を買い入れることで、金融緩和の出口を待たずして財政リスクを抱えていると指摘した。

早川氏はBloombergのインタビューで、9月に行われる日銀の「総括的な検証」において、まずマネタリー・ベース目標を撤廃することが必要と主張した。
早川氏の主張から、主たるものを紹介しよう。

マネタリー・ベースの拡大には理論上効果がない

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大規模な量的緩和の先駆者で「ヘリコプター・ベン」のあだ名を持つベン・バーナンキ前FRB議長ですら、この点を認めていた。
早川氏は、黒田総裁でさえ、ゼロ金利下で単純な貨幣数量説が成立しないことを公に認めていると指摘。
「政策の誘導目標がマネタリーベースであること自体、矛盾している」と断じる。

理論的に効果がない施策が実施された理由の一つは、期待に働きかけて、それが自己実現的に作用することを目指したことだろう。
しかし、日本に関する限り、期待に働きかけるという方法論は十分な結果につながっていない。

検証対象にもならない誘導目標

早川氏は愉快な傍証を挙げている。
昨年5月、異次元緩和スタートから2年目に日銀が公表した『量的・質的金融緩和:2年間の効果の検証』である。
この中で、マネタリー・ベースに触れた箇所はない。
効果の検証をするのに、誘導目標であるマネタリー・ベースに触れていないのだ。
早川氏は、「日銀モデルの中にはマネタリーベースの役割は何もないので、使いようがない」と種明かしする。

効果発揮のメカニズムの中に、誘導目標(=実際に行う仕事)が入っていないというのも、考えてみるとすごいことだ。
そんな破天荒なことをするぐらいなら、誘導目標は、日銀金融政策決定会合メンバーの講演・会見回数にでもしておけばよかった。
それなら、日銀のバランスシートがこうも膨張することはなかった。
日本のGDPは米国のGDPの1/3.7でしかないのに、今や、日銀のバランスシートは、FRBのそれを追い越しつつある。

ゼロ金利制約でソロス・チャートは破綻

Bloombergは、ソロス・チャート(2国間のマネタリー・ベースの比)を見て為替取引を行う市場参加者が多いことを指摘し、マネタリー・ベース目標の撤廃が円高を招くのではないかと早川氏に尋ねている。
早川氏は、論より証拠、ソロス・チャートを見てみればいいという。

ドル円のソロス・チャート

早川氏は指摘する。

「しょせん誤解に働き掛ける効果なので、それを3年間続けてずっと効果が出続けるはずはない。
・・・
(日本のマネタリー・ベース拡大が米国を上回る今でも)実際には円高が進行している。
今の為替とマネタリーベースの関係はまさに正反対に動いている。」

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