早川英男氏:日銀の信認の問題

早川英男

元日銀理事の早川英男氏が、日銀が9月の金融政策決定会合で予定する「総括的検証」についてコメントした。
イールド・カーブのスティープ化を提案したほか、日銀のガバナンスについて厳しい注文をつけた。

イールド・カーブのスティープ化が急務

早川氏はReutersのインタビューで、異次元緩和の円安誘導効果は逓減したと語った。
「導入当初は一定の効果をもたらした」としながら、現状では「日銀が拡大を続けていても全く円安は進んでいない」と指摘する。
いたずらに「ずるずる量を増や」すより、見直すべきと勧めた。
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9月会合での金融政策のチューニングについては

「短期金利のマイナス幅を拡大し、長い(超長期)国債の買い入れを減らし、利回り曲線を立たせるのが急務」

との見方を示した。
また、「長期金利ターゲット」にも言及した。
同様の見方は、日銀の政策に批判的な立場を取る複数のエコノミストからも出されている。
それだけに、理にかなった提案ではあるが、実現性のほどは読みにくい。

日銀首脳は、9月の検証で緩和縮小となることはないと発言している。
これに対して早川氏は、「日銀が保有資産を売却はせず、バランスシートを縮小しないことを強調すればよい」と語っている。

ロジックを失う金融政策

実は、金融政策の行方はたいした問題ではないのかもしれない。
よほど日銀が暴走を始めるのでなければ、金融政策はなるようにしかならない。
右に行こうが左に行こうが大きなリスクが待ち構えているからだ。
むしろ、問題は日銀のガバナンスにあるのではないか。
早川氏は、経済見通しと金融政策の乖離について指摘している。

「7月は2017年度の消費者物価指数(生鮮除く、コアCPI)見通しを従来の1.7%のまま据え置いたにもかかわらず、追加緩和に踏み切ったのは『意味不明』」

インフレが予定通り推移しているなら、追加緩和は不要だ。
追加緩和が必要だったなら、インフレ予想は引き下げるべきだった。
今の日銀は、事実と政策の間のリンクが切れてしまったように見える。
日銀はサプライズ重視をやめ、市場の期待を正しく誘導・醸成する路線に変更したかに見えた。
しかし、いまだにフォワード・ミスガイダンスを続けているのだ。

日銀首脳による量的緩和の限界を否定する発言についても、早川氏は矛盾をついている。

「7月の追加緩和が上場投資信託(ETF)増額などにとどまったのは「国債の買い増しや、マイナス金利の深掘りが難しいからだろう。
そうであれば『量の拡大に限界はない』と言うべきでない」」

日銀の信認の問題

自らロジックを放棄した日銀に対し、早川氏はあくまで厳しい。

「17年度に物価が2%に達するという、誰も信じていない物価見通しを日銀がいつまでも出し続ける状態が続くと、日銀事務方の物価見通しを公表しろ、との議論がわき起こる。
・・・
事務方見通しと政策委員の見通しに大きなかい離があるようであれば、日銀の信認の問題となる。」

中央銀行がどうあるべきかという点については、さまざまな人が幅を持って異なる意見を抱いているのかもしれない。
しかし、最低限、事実とロジックだけは大切にすべきではないか。
今の日銀は、組織内の(実現不可能な)高い目標が、対外的な目標になってしまっている。
実現可能性は当初から高くはなかったが、どんどんゼロに近づいている。
こうした現実を見ない目標は(行内で持つのはご自由だが)社会に流布すべきものではないだろう。