日本企業が金庫株を好むワケ

東証アローズ

Reutersが、日本企業の金庫株を抱え込む傾向に苦言を呈している。
山積みとなった金庫株を「日本の悪しきファイナンスの一例」と批判している。

企業が自社株買いで取得した自社株、あるいは、発行後売却しなかった自社株を金庫株と呼ぶ。
日本では2001年に導入されたが、Reutersは日本企業が中毒になっているという。

「時価総額10億ドル(約1030億円)を超える大企業で、自社株の1割以上を保有する企業数は50社以上に及ぶことが、トムソン・ロイターのデータをBreakingviewsが分析した結果、明らかになった。
野村証券によれば、3月末時点で自社の筆頭株主となっていた上場企業は過去最高の339社に上った。」

金庫株は悪いことなのか。
日本人にはまだそういった感覚は一般的ではない。
むしろ、ウォーレン・バフェット氏が勧めてきたように、クールな株主還元策といった受け取り方が多い。
しかし、Reutersはその弊害も認めている。
「この慣行は、幻覚症状を引き起こす」のだという。

Reutersは、まず、時価総額が金庫株を含むベースで計算されることを問題視する。
実際に市中に流通している株式は金庫株を除いた分なのにだ。
Reutersは「価値の水増し」と表現する。

なんと、形式的な議論だろう。
投資家が金庫株を除くベースを適切と考えるなら、自分で計算すればいいことではないか。
いまどき、自社の時価総額をPRしたがる企業も多くはないだろうから、(桁が変わるというなら別だが)金庫株が大きな問題とは思えないのだ。

ところが、この後Reutersは本質的な議論を始める。

「より大きな懸念は、日本の企業幹部が、金庫株を自由に使える金だと認識してしまうことだ。
本来ならばキャッシュで適切に調達されるべき買収資金の対価としてあてがったり、経営陣に友好的な投資家を、他の株主の犠牲のもとで、突如強力な議決権の持ち主に変貌させたりする。」

何が言いたいのかと言えば、金庫株はいったん消却しておき、必要ならあらためて所定のルールに則って新株発行しなさいということだ。

  • 買収資金は、買収時点で銀行借入・社債発行・新株発行(現金または株式対価)を行え。
    そうすれば、その際その買収に対する投資家の審判を受けることになる。
  • 敵対的買収への対抗策として、友好的な株主や第三者に対して有利な条件で金庫株を割り当てるのは、割当先以外の株主の利益を害しかねない。

Reutersはもちろん、金庫株の株主還元策としての有効性は認めている。
「株主への意識が高い経営陣がまだ珍しい日本では、奨励されるべき」という。
しかし、消却もせず、高額の金庫株を「山積みにすることは日本の悪しきファイナンスの一例であり、大事にされるべきものではない」と批判している。

まさに、この中に日本の経営者の本音が隠されているのではないか。
自社株は買い戻すが、償却はしない。
これが意味することは、

  • 株主還元には一定の努力をする。
  • しかし、その範囲は、経営者にメリットのある範囲だけだ。

ということなのではないか。