唐鎌大輔氏:円高はインフレ減税

日本円

みずほ銀行の唐鎌大輔氏のコラムが、経済学の基礎・原則を思い出させてくれるもので勉強になる。
政府が言うように家計の実質所得を守りたいなら、円安よりも円高の方が望ましいと解説した。

9月の日銀の「総括的な検証」への各界からの期待が高まっている。
おそらく、それぞれの立場の人がそれぞれの高い期待を抱いているのだろう。
一方で、そうした期待・希望の実現が望み薄であることも勘づいているはずだ。

そもそも異次元緩和は分の悪い賭けだった。
極めて楽観的な展開が実現し、綱渡りが成功し続ける必要のある方法論だったように思う。
こうした、いわば能動的な政策が誤りとは言わないが、こうした政策を成功させるには継続的に能動的であり続けなければいけない。
異次元に居続けるにはテンションが必要なのだ。
一時でも力を抜けば、賞味期限が切れて、理屈通りの世界に戻ってしまう。
そういう意味で、異次元緩和の賞味期限は、異次元緩和開始のアナウンス直後に切れていたのかもしれない。

では、理屈どおりの世界とはどんな世界なのか。
経済学はどう教えてくれるのか。
唐鎌氏のコラムから勉強しよう。
唐鎌氏のスタート・ラインは、日本経済の需給ギャップが(ほぼ)解消している事実だ。
唐鎌氏は

「円高を条件反射的に『全面的な悪』として切って捨てることが本当に正しいのか」

と日本では受けの悪いテーマをあえて提起している。
購買力平価に擦り合う現在の為替水準は、円高とさわぐほどのものではないと結論している。

以下、個々の議論から重要なものをいくつか紹介する。

円高は交易条件を改善させる

唐鎌氏は、「円高と原油価格の低位安定は日本経済における交易条件(輸出物価/輸入物価)の改善を促す」と指摘。
交易条件の改善自体は、国にとっては利益である。
唐鎌氏によれば、2014年以降の交易条件の改善は1985年のプラザ合意後以来であるという。
プラザ合意後には、円高に対処するため金融緩和が行われたが、それがバブル発生の一因となったと回顧している。

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